【なぜ?】発達障害が増加している理由を解説【ADHD・ASD】

近年、「発達障害」という言葉を耳にする機会が大幅に増えています。
テレビやSNS、書籍などでも頻繁に取り上げられ、社会的な関心が高まっている分野です。
その一方で、「なぜ発達障害が増えているのか?」と疑問を抱く人も少なくありません。

本記事では、発達障害とはどのようなものかを改めて整理した上で、近年増加傾向にある理由を、医学的・社会的な観点から丁寧に解説します。

発達障害とは?

発達障害とは、生まれつき脳の機能の一部に偏りがあることで、日常生活や社会生活において生きづらさを感じやすい特性のある状態を指します。
これは「しつけ」や「努力不足」が原因ではなく、脳の発達や情報処理の仕方に由来する先天的な特性です。

発達障害にはいくつかの分類がありますが、代表的なものとして以下の3つが挙げられます。

1. ADHD(注意欠如・多動症)

ADHDは「注意欠如・多動症」と呼ばれ、不注意・多動性・衝動性の3つの特徴が見られます。
たとえば、「物をよく失くす」「集中が続かない」「思ったことをすぐ口にしてしまう」といった行動が目立つことがあります。
これらは本人の性格というよりも、脳の機能の特徴によるものと理解されています。

2. ASD(自閉スペクトラム症)

ASDは、以前「自閉症」「アスペルガー症候群」と呼ばれていた状態を統合した診断名です。
主な特徴としては、対人関係やコミュニケーションの難しさ、特定の物事への強いこだわりなどがあります。
人によって特性の現れ方には幅があり、「スペクトラム(連続体)」という考え方が採用されています。

3. LD(学習障害)

LD(学習障害)は、知的な遅れはないものの、「読む」「書く」「話す」「聞く」「計算する」といった特定の学習領域に著しい苦手さがみられる状態です。
周囲からは「努力が足りない」と誤解されやすいですが、これは脳の情報処理の仕組みに関する特性であり、本人の努力だけでは克服しづらい部分があります。

発達障害者数の現状

厚生労働省が平成28年(2016年)に行った調査によると、発達障害と診断された人の数は約48万1,000人にのぼります。
内訳は次の通りです。

  • 0~19歳: 約22万5,000人
  • 20歳以上: 約24万3,000人
  • 年齢不明: 約1万3,000人

このうち、障害者手帳を取得している人の割合は**約76.5%**と報告されています。
実際には、診断を受けていない方や、軽度で生活上の困りごとが少ない方を含めると、潜在的な当事者はさらに多いと推定されています。

なぜ発達障害が増えているのか?

なぜ発達障害が増えているのか?

発達障害の診断を受ける人が増えている背景には、主に二つの理由があると考えられます。
それは「診断基準の変化」と「社会的認知の向上」です。

理由①:診断基準の変更

2013年に米国精神医学会(APA)が発表した**DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)において、発達障害の診断基準が大きく見直されました。
それまで「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」など、複数に分かれていた診断カテゴリーが、すべて
「自閉スペクトラム症(ASD)」**として統一されたのです。

これにより、従来の基準では「診断の対象外」とされていた人々が、DSM-5の新しい基準によって診断の対象に含まれるようになりました
つまり、実際の患者数が急増したというよりも、「診断の枠が広がった」ことが、統計上の増加として表れているのです。

また、ADHDについても同様に診断基準が見直され、成人への診断がより柔軟になりました。
以前は「子どもの障害」というイメージが強かったADHDですが、DSM-5では成人ADHDも正式に認められ、社会人や親世代にも診断されるケースが増加しています。

理由②:認知度の向上と受診機会の増加

もうひとつの大きな理由は、社会全体での「発達障害」に対する理解と関心の高まりです。

インターネットやSNSの普及により、誰もが手軽に発達障害に関する情報にアクセスできるようになりました。
YouTubeやブログなどを通じて、当事者の体験談や専門家の解説に触れる機会も増え、「もしかして自分も…」と感じて受診する人が増えています。

さらに、教育現場や職場でも発達障害への理解が進み、支援体制が整備されつつあります。
発達障害支援センターやスクールカウンセラーの存在、合理的配慮の制度などにより、早期発見・早期支援が可能になりました。
その結果、診断件数が増えている=社会的認知が高まっているという側面もあるのです。

増加は「悪いこと」ではない

社会の理解が前進している証拠

「発達障害が増えている」と聞くと、社会の問題として不安に感じる人もいるかもしれません。
しかし、これは必ずしもネガティブな現象ではありません。

むしろ、これまで見過ごされてきた人々が適切に支援につながるようになったという点では、社会の理解が前進している証拠とも言えます。
特性を理解し、自分に合った環境や支援を受けることで、本人がより生きやすくなるケースも増えています。

発達障害は「治す」ものではなく、「特性に合わせて生き方を工夫する」ものです。
社会がそれを受け入れる姿勢を持つことが、今後ますます重要になっていくでしょう。

まとめ

発達障害の増加には、

  1. 診断基準の変更による範囲の拡大
  2. 社会的認知の向上と受診の増加

という二つの大きな要因があります。

つまり、単純に「発達障害の人が増えた」というよりも、「正しく理解される人が増えた」と捉えることができます。

今後も、発達障害に対する偏見をなくし、誰もが自分らしく暮らせる社会をつくるために、理解と支援の輪を広げていくことが求められています。