【お願い】ASDの周りの人に配慮してほしいこと【大人の発達障害】

ASD(自閉スペクトラム症)は、発達障害の一つであり、社会的なコミュニケーションの難しさや、行動・興味の偏りといった特徴を持つ状態を指します。かつては「自閉症」「アスペルガー症候群」などと区分されていましたが、現在ではこれらをまとめてASDと呼ぶのが一般的です。スペクトラムという言葉の通り、症状の現れ方や程度は人によって大きく異なります。そのため、ASDの人が抱える困難は一様ではなく、支援や配慮の方法も多様性が求められます。

ASDの人は、得意な分野においては非常に高い集中力やこだわりを発揮することがあります。一方で、曖昧な指示や状況の変化に対応することが難しく、周囲から誤解されやすいことも少なくありません。こうした特性は「能力が低い」ということではなく、環境や人間関係とのミスマッチによって困難が生じやすいのです。社会全体がこの点を理解し、適切なサポートを整えていくことが重要です。


配慮とは

ASDの人が社会や職場で能力を十分に発揮するためには「配慮」が欠かせません。ここで言う配慮とは、単なる思いやりや優しさといった曖昧なものではなく、法的にも根拠を持つ「合理的配慮」を意味します。合理的配慮とは、障害者差別解消法に基づき、障害のある人が健常者と同等に活動できるよう、必要に応じて環境を調整することです。

配慮は「特別扱い」とは異なります。例えば、ASDの人が口頭での指示を理解しにくい場合、メモやメールで内容を伝えることは決して過度な優遇ではありません。それは単にコミュニケーションの方法を相手に合わせているにすぎず、仕事の成果を高める合理的な手段です。このように配慮は、ASDの人だけでなく、結果として組織全体の効率や安心感を高めることにもつながります。


ASDの苦手事と配慮事項

1. 臨機応変な対応が苦手

ASDの人は、予定の変更や想定外の出来事に対応することが難しい傾向があります。予定通りに進むことを前提に行動しているため、急な変更があると強い不安や混乱を覚えることがあります。

【配慮の例】
・予定変更は可能な限り早めに伝える
・業務マニュアルを用意し、基本の流れを明確にしておく
・柔軟な対応が求められる業務は、他の人と分担する

こうした工夫により、安心して作業に取り組める環境を作ることができます。

安心して作業に取り組める環境を作る

2. マルチタスクが苦手

複数の作業を同時に進めることは、ASDの人にとって大きな負担です。一つのことに集中しやすい特性があるため、並行作業を求められると混乱しやすくなります。

【配慮の例】
・業務を細かく区切り、一つずつ取り組めるようにする
・優先順位を明確にし、順序立てて指示する
・「同時進行」を避け、タスクの整理をサポートする

これにより、得意な集中力を発揮しやすくなり、作業効率も向上します。

3. 感覚過敏がある

ASDの人の中には、音や光、匂いなどに強く反応してしまう感覚過敏を持つ方がいます。例えば、蛍光灯の光がまぶしすぎる、キーボードの音が耳障りに感じる、といった形で日常的に大きなストレスを抱えることもあります。

【配慮の例】
・イヤーマフや耳栓、サングラスなどの使用を認める
・静かな作業スペースを確保する
・強い匂いのする清掃用具や香水を避ける

感覚過敏は本人の意志で制御できるものではありません。環境を工夫することで、安心して活動できるようになります。

4. 過集中が起こる

ASDの人には、特定の作業に極端に集中してしまう「過集中」という状態がよく見られます。これは長所として高い成果を生むこともありますが、休憩を忘れて体調を崩す、他の業務を後回しにしてしまうなどのリスクもあります。

【配慮の例】
・休憩時間を明示し、定期的に声をかける
・アラームやタイマーで作業の区切りを作る
・過集中が求められる業務を適切に割り振る

過集中を適切にコントロールすることで、ポジティブな力に変えることができます。

過集中を適切にコントロールする

5. 口頭指示の理解が難しい

ASDの人は、口頭だけで伝えられる情報を理解しにくい場合があります。話し言葉は一度きりで消えてしまうため、内容を正確に記憶するのが難しいのです。

【配慮の例】
・指示は文書で残す(メール、メモ、チャットなど)
・図や表を活用して視覚的に伝える
・要点を簡潔にして繰り返し確認する

この工夫によって、誤解やミスを防ぎ、本人の安心感も高まります。


まとめ

ASDは「できない人」を示す言葉ではなく、「特性がある人」を表すものです。臨機応変さやマルチタスクに弱さがある一方で、集中力や正確さに優れた力を発揮できる人も多くいます。その力を活かすためには、周囲が適切に配慮を行うことが欠かせません。

配慮とは、特別扱いではなく「環境を整えること」です。予定変更を早めに知らせる、指示をメモで残す、静かな作業環境を用意するといった工夫は、ASDの人に限らず多くの人にとって働きやすい環境をつくります。つまり配慮は、一部の人のためではなく、組織や社会全体に利益をもたらす取り組みなのです。

多様な特性を持つ人が自分らしく力を発揮できる社会は、誰にとっても安心して生きやすい社会につながります。ASDへの理解と配慮は、その第一歩だと言えるでしょう。