「やらなければいけないのに、なぜか行動に移せない」
「気づけばいつも締切ギリギリになってしまう」
このような「先延ばし癖」に悩む方は少なくありませんが、特に**ADHD(注意欠如・多動症)**の特性を持つ方にとっては、大きな生きづらさの一因となっています。
本記事では、ADHDの基本的な理解から、先延ばし行動の原因、そして実践できる具体的な対策までを、丁寧にわかりやすくご紹介します。
ADHDとは? 〜脳の特性による“ちょっとした困りごと”〜
ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、「注意欠如・多動症」と呼ばれる発達障害の一つです。
これは生まれつき脳の機能に偏りがあることが原因で、日常生活や仕事、学習などの場面でさまざまな困りごとが起こりやすい状態を指します。
ADHDの主な特性としては、以下の3つがあります。
- 不注意(注意がそれやすい、集中が続かない)
- 多動性(落ち着きがない、体を動かし続ける)
- 衝動性(考える前に行動してしまう、待てない)
こうした特性によって、他の人が“当たり前に”できていることが難しく感じられる場面が多くあります。その一つが「やるべきことを後回しにしてしまう」つまり、先延ばし行動です。
どうして先延ばししてしまうのか?ADHDの特性による4つの主な理由
ADHDの人がタスクを後回しにしてしまう理由には、いくつかのパターンがあります。以下では、特に多く見られる4つの傾向をご紹介します。
1. 好きなことを優先してしまう(衝動性)
ADHDの方は衝動性が高いため、自分の興味を引くものに強く反応します。
本来は「先にやるべきこと」があると分かっていても、面白そうなことや好きなことを見つけると、そちらを優先してしまう傾向があります。
たとえば、仕事の資料を作らなければいけないのに、ふと見つけたSNSの投稿に夢中になってしまい、気づけば何時間も経っていた……ということもよくあるケースです。
2. やりたい作業に没頭しすぎる(過集中)

ADHDの特性のひとつに、「過集中」と呼ばれる状態があります。これは、ひとつのことに異常なほど集中してしまい、他のことが目に入らなくなる状態です。
一見すると集中できるのは良いことに思えますが、やらなければいけない他の作業に取りかかれなくなるなど、時間配分が極端になりやすいという問題をはらんでいます。
3. 優先順位がわからない(計画の苦手さ)
ADHDの人は、タスクの重要性や順番を判断するのが苦手な傾向があります。
頭の中での整理がうまくいかず、「何から手をつければいいのかわからない」と感じてしまい、そのまま手が止まってしまうことも。
こうした「段取り力」の弱さが、タスクの先延ばしにつながります。
4. あれこれ手を出してしまう(不注意)
不注意の特性を持つ方は、ひとつの物事に集中し続けることが難しく、途中で気が散ってしまいがちです。
たとえば、片付けをしていたはずが、途中で読みかけの本を見つけて読み始め、さらにその本に関連するネット検索を始めてしまう——。このように、いろいろなことに手を出し、どれも中途半端に終わることがよくあります。
ADHDの先延ばし癖を改善するための3つの具体的な対策
先延ばし癖には、ADHDの特性が大きく関係していることがわかりました。では、実際にどのように改善を目指せばよいのでしょうか。ここでは、すぐに実践できる3つの対策をご紹介します。
対策1:タスク管理アプリを活用する

ADHDの方にとって、頭の中だけでやるべきことを整理し、覚えておくのは難しいものです。
そこで有効なのが、タスク管理アプリの活用です。
たとえば、
- 「Todoist」や「Microsoft To Do」などのToDoリスト
- カレンダーアプリと連動して使えるスケジューラー
- 色分けやラベル付けができるノートアプリ(Notionなど)
これらを使って、タスクを見える化することで、今やるべきことを明確にできます。また、細かくタスクを分解することで、「大きすぎて手がつけられない」問題も軽減されます。
対策2:アラームやタイマー機能を活用する
時間の感覚をつかむのが苦手というのも、ADHDの特性のひとつです。そのため、気づいたら長時間が過ぎていた、ということが起こりがちです。
これを防ぐには、アラームやタイマーを使って時間を区切ることが有効です。
たとえば、
- 作業開始時に「30分タイマー」をセットする
- 休憩も「5分」と決めて、アラームで管理する
- 一日のスケジュールを時間ごとに区切り、通知で促す
このように、外部の“リマインダー”に頼ることで、自分の集中の波をうまくコントロールできます。
対策3:注意が散る環境をつくらない
作業に集中したくても、周囲に気を散らすものが多いと、ADHDの人にとっては非常に厳しい環境になります。
そのため、注意が散りにくい環境を意識的に作ることが大切です。
- スマートフォンを別室に置く、もしくは通知を切る
- 作業スペースをシンプルに保つ
- 音楽や雑音を遮断できるノイズキャンセリングヘッドホンを使う
- 必要のないタブやアプリを閉じておく
このような「刺激を減らす工夫」は、集中力を維持するためにとても効果的です。
おわりに:先延ばしを「自分のせい」にしないで
ADHDの特性によって引き起こされる先延ばし行動は、「怠けている」わけでも、「意志が弱い」わけでもありません。脳の働き方の違いが原因であり、きちんと理解し、対策を講じることで、少しずつ改善していくことが可能です。
また、「完璧にやろう」と思いすぎず、小さな工夫を積み重ねることが大切です。最初は難しくても、自分の特性を責めず、むしろ**「自分に合ったやり方」を見つけるためのステップ**と捉えていきましょう。
一人で抱え込まず、必要であれば専門家や支援機関の助けを借りるのも、選択肢のひとつです。