服装は、第一印象を大きく左右する要素の1つです。しかし、発達障害(特にASDやADHD)のある人の中には、「服装選びが苦手」「同じ服ばかり着てしまう」「季節感のある服装ができない」など、身だしなみやファッションに関して独特の傾向や困りごとを抱える人が少なくありません。
今回は、発達障害の人に見られやすい服装の特徴と、そこから生じやすい困りごと、そして改善のための具体的な工夫について解説します。
発達障害の人の服装の特徴
①こだわりによる独特さ・偏りが出る
発達障害の中でも特にASD(自閉スペクトラム症)の人に多い特徴として、「限定された興味」と「同一性の保持」が服装に表れることがあります。
限定された興味とは、興味の対象がごく限られていること。結果として、ファッションに興味を持たない人も多く、毎日同じ服を着ている、あるいは服装のバリエーションが極端に少ないといった傾向が見られます。
また、「同一性の保持」とは、変化を嫌い、いつも同じ状態を保とうとする傾向のことです。この特性が服装にも影響し、「この帽子じゃないと嫌」「このコートしか着たくない」といった強いこだわりを持つことがあります。周囲から見ると「いつも同じ格好をしている」と感じられることもありますが、本人にとっては“安心できるスタイル”なのです。
②身だしなみに無頓着になりやすい
ASDの人の中には、ファッションに対して強い興味を持つ人もいますが、その一方で「服装への関心が殆どない」という人も多くいます。
一般的には「ダサいと思われたくない」「人並みの格好をしたい」という意識から、最低限の服装を整えようとするものですが、ASDの人は他者の視点を想像することが難しく、「どんな格好をすれば良いのか」「その場に相応しい服装とは何か」が分かりにくいことがあります。
その結果、TPO(時・場所・場合)に合わない服装をしてしまうこともあります。例えば、冠婚葬祭にカジュアルな服装で参加してしまう、職場でよれよれのシャツを着てしまう、色の組み合わせが極端で目立ってしまう――こうしたことが原因で、「身だしなみがだらしない」「常識がない」と誤解されるケースも少なくありません。
また、ADHDの人の場合は、朝の支度に時間が掛かり過ぎて服選びに迷い、結果的に遅刻してしまうこともあります。
③苦手な素材や形がある

発達障害の人は、感覚過敏や感覚鈍麻といった特徴を持っている場合があります。
感覚過敏とは、光・音・匂い・肌触りなどに対して人一倍強く反応してしまう状態です。服の素材がチクチクする、タグの感触が気になる、ポリエステル生地が肌に当たるのが不快――といった理由から、特定の服を避けてしまうことがあります。
その結果、「着られる服が限られてしまう」「同じ服ばかり選んでしまう」といった現象が起こりがちです。本人にとっては、快適に過ごすための合理的な選択ですが、周囲から見ると「こだわりが強い」と映ることもあります。
服装が原因で起こりやすい困りごと3選
①他人の評価が下がる
最も大きな問題として挙げられるのが「他人からの評価の低下」です。発達障害の特性が原因で、TPOに合わない服装やだらしない印象の格好をしてしまうことがあり、「不潔」「だらしない」「常識がない」と誤解されてしまうことがあります。
特に職場や就職活動の場面では、この印象が大きなマイナスになることもあります。就労移行支援の現場でも、面接練習を行う際に「シャツが皺だらけ」「ネクタイが曲がっている」「靴が汚れている」といった服装で来る人がおり、スタッフが「面接ではきちんと整えましょう」と指導することがあります。
また、ADHDの人は朝の準備に時間を取られて慌ててしまい、服装の確認ができずに出てしまうことも少なくありません。
②体調不良を起こす
感覚鈍麻(寒さや暑さを感じにくい状態)がある場合、季節に合わない服装をしてしまうこともあります。
例えば、真冬に薄着で出掛けて風邪を引く、真夏に厚着をして熱中症気味になる――といったケースです。本人は「寒くない」「暑くない」と感じていても、体には確実に負担が掛かっています。感覚のズレがあるために、気づかないうちに体調を崩してしまうことがあるのです。
③おしゃれをしたくてもできない
感覚過敏のために、着たい服があっても「素材がチクチクする」「化粧品の匂いが無理」といった理由でおしゃれができない人もいます。特に女性の場合、職場で「清潔感のある服装」や「軽いメイク」が求められることも多く、そうした社会的な期待と自分の感覚との間で葛藤を抱えることがあります。
「おしゃれをしたいのにできない」「我慢して着ると体調が悪くなる」といった悩みは、自己肯定感の低下にも繋がりかねません。
改善方法3選
①服装のローテーションやパターンを決めておく
毎朝「何を着よう」と悩むのを防ぐために、あらかじめ服装のローテーションを決めておくのがお勧めです。
季節ごとに「部屋着」「外出用」「仕事着」「フォーマル」の4種類に分け、それぞれ3パターンずつ準備しておくと安心です。コーディネートのセンスに自信がない場合は、信頼できる友人や家族、ショップ店員に相談するのも良い方法です。
一度「これで大丈夫」という組み合わせを決めたら、それを繰り返し着るようにすると、安心して日々の準備ができます。

②身だしなみチェックリストを作る
「服装の乱れを指摘されがち」という人は、毎朝チェックリストを使うのが効果的です。
例として、
- 髪の毛は整っているか
- シャツに皺や汚れはないか
- ネクタイは曲がっていないか
- 髭や眉の手入れはできているか
- 靴は汚れていないか
といった項目を作り、鏡の前で確認してから外出する習慣をつけましょう。これをルーティン化することで、身だしなみの抜け漏れを防ぐことができます。
③気温に合わせて服を選ぶ
感覚鈍麻の人は、自分の体感ではなく「気温の数値」を参考に服装を決めるのがお勧めです。お天気アプリなどでその日の最高・最低気温をチェックし、以下のような目安で服装を選ぶと良いでしょう。
- 25℃以上:半袖
- 20〜24℃:薄手の長袖
- 16〜19℃:長袖+カーディガン
- 12〜15℃:セーター・トレーナー
- 8〜11℃:長袖+トレンチコート・ジャケット
- 5~7℃:ニット+ダウンジャケット
- 4℃以下:長袖+ダウンジャケット+マフラー・手袋
最近では、気温や天気に応じた服装を提案してくれるアプリもあるため、そうしたツールを活用するのも有効です。
まとめ:自分に合った服装の工夫を
発達障害のある人にとって、服装は「おしゃれ」よりも「安心感」や「快適さ」が重視されることが多いものです。
しかし、少しの工夫で「TPOに合った服装」や「体調に優しい服装」を整えることは可能です。周囲の評価や社会的なルールに振り回され過ぎず、自分の感覚や生活に合った服装の工夫を見つけることが、快適に暮らす第一歩になるでしょう。