朝、どうしても仕事に行きたくないあなたへ ― 発達障害と働く悩みを考える
朝、目が覚めた瞬間に「今日だけはどうしても仕事に行きたくない」と思うことはありませんか?
誰にでも一度は経験のある感情ですが、それが頻繁に起こるようになると、心や体のSOSのサインかもしれません。特に発達障害のある方の場合、この「行きたくない」という気持ちの背景には、特有の理由や苦しさが隠れていることがあります。
今回は、「発達障害の人が仕事に行きたくない理由」と題して、
① 発達障害とは何か
② 行きたくないと感じる主な5つの理由
③ そのときの具体的な対処法
この3つの観点から丁寧に解説していきます。
■ 発達障害とは ― 生まれつきの脳の特性による「生きづらさ」
発達障害とは、生まれつき脳の機能の一部に偏りがあることにより、生活や人間関係で困難を感じやすい障害の総称です。代表的なものには次の3つがあります。
- ADHD(注意欠如・多動症):不注意・衝動性・多動性といった特性が見られ、集中の維持やスケジュール管理が苦手な傾向があります。
- ASD(自閉スペクトラム症):対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりが特徴です。相手の感情を読み取ることや曖昧な指示に対応するのが難しい場合があります。
- LD(学習障害):読む・書く・聞く・話す・計算するなどの一部スキルの習得が著しく困難です。知的能力とは無関係に、特定の分野だけが苦手になる傾向があります。
これらの特性は「努力不足」や「性格の問題」ではなく、脳の機能的な違いによって生じるものです。そのため、本人にとっても「うまくやりたいのにできない」という苦しさを伴うことが多いのです。
■ 発達障害の人が「仕事に行きたくない」と感じる5つの理由
① 上司や同僚との人間関係がうまくいかない
発達障害の方は、コミュニケーションや人間関係の構築に苦手意識を持つことがあります。
たとえばASDの方の場合、抽象的な表現が理解しづらかったり、相手の表情や言葉の裏にある感情を読み取るのが難しいことがあります。その結果、意図せず誤解を招いたり、距離を取られてしまうこともあります。
またADHDの方は、衝動的な発言や行動によって人間関係のトラブルに発展してしまうケースもあります。職場の雰囲気がぎくしゃくしてくると、「仕事に行くのがつらい」という感情が強くなるのは自然なことです。
② 仕事量が多い・仕事内容が合っていない

発達障害の特性の中には、時間管理やマルチタスクが苦手といった傾向があります。
そのため、仕事量が多すぎたり、臨機応変な対応が求められる職種ではパフォーマンスが発揮しにくく、劣等感や焦りを感じてしまうことも。
一般雇用の職場では、定型発達の社員と同じ基準で成果を求められることも多く、「頑張っているのに追いつけない」という状況がストレスとなります。
③ 通勤や環境による疲労
発達障害のある方の中には「感覚過敏」を持つ人もいます。
満員電車の音や人の多さ、照明やにおいなど、周囲の刺激に強いストレスを感じやすく、通勤そのものが大きな負担になることがあります。
「仕事が嫌いなのではなく、会社に行くまでがつらい」というケースも少なくありません。
④ 体調を崩しやすい
ADHDの方の多くは睡眠リズムの乱れや過集中による疲労など、体調管理に課題を抱えることがあります。
またストレスを感じても、上手に発散することが苦手な傾向もあり、知らず知らずのうちに心身のバランスを崩してしまうこともあります。
疲労が慢性化すると、さらに仕事に行くのがしんどく感じられ、悪循環に陥りやすくなります。
⑤ 二次障害を発症してしまう
「仕事に行きたくない」という状態が長く続くと、うつ病や適応障害などの二次障害を発症するリスクが高まります。
発達障害の方はもともと環境からのストレスを受けやすいため、失敗体験や人間関係のトラブルが積み重なることで、精神的に限界を迎えてしまうことがあります。
朝、家を出ようとすると涙が出てしまう、体が動かないといった症状がある場合は、早めに専門機関に相談することが大切です。
■ 「仕事に行きたくない」ときの4つの対処法
① 理由を明確にする

まず、「なぜ行きたくないのか」を具体的に言語化しましょう。
人間関係なのか、仕事内容なのか、体調面なのか――原因がわかるだけで、対策の方向性が見えてきます。
たとえば睡眠の質が悪いなら医師に相談、仕事量が多いなら上司に調整を依頼するなど、行動の第一歩を決めやすくなります。
② メリハリをつけて働く
真面目で責任感の強い人ほど、仕事のことを24時間考えてしまいがちです。
しかし、リフレッシュの時間を取らなければ、心も体も疲弊してしまいます。
仕事の時間とプライベートの時間をしっかり分け、「頑張るときは頑張る、休むときは休む」というリズムを意識してみましょう。
③ 医療機関に相談する
もし体調不良や強いストレスを感じている場合は、ためらわず医療機関を受診しましょう。
適切な治療やカウンセリングを受けることで、早期の回復につながることも多いです。
「まだ我慢できる」と無理を重ねるよりも、専門家に話すことで自分の状態を客観的に見つめ直せます。
④ 職場環境を調整してもらう
自分の努力だけでは解決できない場合、上司や人事に相談して環境調整をお願いすることも大切です。
業務量の見直しや勤務時間の柔軟化など、少しの配慮で働きやすくなることがあります。
理解を得にくい場合は、転職や障害者雇用制度の利用も視野に入れ、自分に合った働き方を検討しましょう。
■ まとめ ― 「行きたくない」は、あなたの心のサイン
「朝、どうしても仕事に行きたくない」という気持ちは、決して怠けではありません。
それは、心や体が「無理をしているよ」と教えてくれているサインです。
発達障害を持つ方にとって、社会の中で働くことは簡単なことではありませんが、適切なサポートや理解があれば、無理せずに自分らしく働くことは可能です。
自分を責める前に、まずは「なぜつらいのか」を見つめ、少しずつできる対策から始めてみてください。
そして、必要であれば専門家や周囲の人に助けを求めましょう。
頑張りすぎず、あなたのペースで一歩ずつ前に進めば、それで十分なのです。