【発達障害】音楽療法の効果と種類について解説【ADHD/ASD】

はじめに

近年、「音楽療法(ミュージックセラピー)」という言葉を耳にする機会が増えています。特に発達障害を持つ子どもたちへの支援の1つとして注目されており、医療機関や福祉施設、教育現場などで導入が進んでいます。

本記事では、音楽療法とはどのようなものか、どのような種類や効果があるのか、そして発達障害の特性にどのように働き掛けるのかを、分かりやすく解説していきます。

発達障害とは?

発達障害とは、生まれつき脳の機能の一部に偏りがあることで、社会生活や人間関係などに生きづらさを感じやすい状態を指します。大きく分けると、以下のような分類があります。

ADHD(注意欠如・多動症)

注意が続かない、不注意によるミスが多い、思いついた行動をすぐにしてしまう(衝動性)、じっとしていられない(多動性)といった特性があります。

ASD(自閉症スペクトラム障害)

対人関係やコミュニケーションに課題が見られ、こだわりの強さや興味の偏りなどが特徴的です。

LD(学習障害)

読む・書く・計算する・聞く・話すといった学習スキルの一部に著しい困難を示す障害です。

これらの障害は「病気」というよりも、「脳の特性の違い」であり、環境や支援のあり方によって生きやすさは大きく変わります。その支援の1つとして、音楽療法は自然な形で心身にアプローチできる方法として注目を集めています。

音楽療法とは?

音楽療法とは、音楽のもつリズムやメロディ、ハーモニーなどの要素を活用して、心身の健康を支えるリハビリテーションの一種です。音楽には、人の心を穏やかにしたり、気分を高めたり、体の動きを促したりする力があります。この「音楽の効果」を専門的に利用し、心理的・身体的な回復を促すのが音楽療法です。

音楽療法は、主に「音楽療法士」と呼ばれる専門家によって行われます。音楽をただ聴くだけでなく、歌う・演奏する・リズムに合わせて体を動かすなど、目的に応じて様々な方法が取られます。

目的としては、

  • 健康の維持と回復
  • 問題行動の改善
  • 情緒の安定
  • 自己表現やコミュニケーション能力の促進
  • 生活の質(QOL)の向上

などが挙げられます。

医療機関(リハビリテーション科・精神科・小児科など)のほか、特別支援学校や放課後等デイサービス、障害者支援施設などでも実施されています。子どもから高齢者まで幅広い年代に効果があることが報告されており、発達障害のある子どもに対しても、心理面・行動面・身体面の改善を目指して取り入れられています。

音楽療法の主な種類

音楽療法は、大きく「能動的音楽療法」と「受動的音楽療法」に分けられます。

能動的音楽療法

「能動的」とは、自分から積極的に行うという意味です。この方法では、本人が歌ったり、楽器を演奏したり、リズムを取ったりと、自ら音楽活動に参加します。

例えば、太鼓を叩いてリズムを感じたり、他の子と一緒に歌を歌ったりすることで、協調性や集中力、表現力の向上が期待されます。音を通して自分の感情を表現することで、情緒の安定や自発性の促進にも繋がります。

受動的音楽療法

受動的音楽療法

一方、「受動的音楽療法」は、音楽を聴くことを中心にしたアプローチです。

クラシック音楽や自然音など、落ち着いた音を聴くことでリラックス効果を得たり、不安や緊張を和らげたりする効果があります。精神的に不安定な人や、外部刺激に敏感な発達障害の人にとって、心を落ち着ける時間として有効な方法です。

更に細かい音楽療法の分類

音楽療法は実践の形態によって、以下のようにも分類されます。

個人音楽療法

1対1で行われる形式。利用者の特性や状態に合わせたオーダーメイドの支援が可能です。

集団音楽療法

複数人で歌や演奏を行う形式。協調性や社会性を育む効果があり、発達障害の子どもに特に適しています。

リトミック

音楽に合わせて体を動かし、リズム感や表現力、想像力を育てる方法。身体と心の両面に働き掛けます。

これらの手法は、発達段階や支援目的によって柔軟に組み合わせて行われます。

発達障害への音楽療法の効果

発達障害を持つ子どもへの音楽療法は、単に「楽しい活動」ではなく、明確な治療的目的を持っています。以下では、その代表的な効果を紹介します。

ソーシャルスキルの向上

発達障害のある子どもは、人との関わり方や社会的ルールを自然に学ぶことが難しい場合があります。

集団音楽療法では、皆で歌う・リズムを合わせる・順番を守るなどの活動を通して、協調性や他者への配慮を学ぶことができます。音楽を通して「一緒に何かを作り上げる」という体験が、社会性を育てる貴重な訓練となります。

運動機能の発達

発達障害の中には、姿勢を保つことや、複数の動作を同時に行う協調運動が苦手なケースも見られます。

リズムに合わせて手を叩いたり、体を動かしたりすることで、運動機能を自然に鍛えることができます。音楽と運動を組み合わせることで、脳と体の協調を促進し、身体感覚の向上が期待されます

自己表現力・想像力の向上

音楽は「言葉を使わないコミュニケーション手段」とも言われます。

言葉で自分の気持ちを表現するのが難しい子どもでも、音やリズムを通して感情を表すことができます。「できた」「楽しい」といった成功体験が積み重なり、自己肯定感や自信の向上にも繋がります。更に、音楽を通して感情やイメージを広げることにより、創造力や想像力の発達も期待されます。

音楽を通して感情やイメージを広げることにより、創造力や想像力の発達も期待されます。

まとめ:音楽を通して「できる」を増やす支援へ

音楽療法は、薬や訓練のように直接的な治療ではありませんが、子どもたちが「楽しみながら成長できる」支援方法の1つです。特に発達障害のある子どもにとっては、音楽という安心できるツールを介して、心のバランスを整えたり、人との関わり方を学んだりする貴重な機会になります。

音楽療法は、医療機関だけでなく、地域の福祉施設や放課後等デイサービスなどでも取り入れられています。興味がある方は、まず地域のクリニックや支援機関に相談してみるとよいでしょう。

音楽の力が、子どもたちの成長を優しく後押ししてくれるかもしれません。