双極性障害は、気分の変動が大きい精神疾患の一つです。以前は「躁うつ病」と呼ばれており、気分が高揚して活動的になる「躁状態」と、気分が落ち込み意欲を失う「うつ状態」を繰り返す特徴があります。躁とうつのどちらの状態にも明確な診断基準があり、持続期間や症状の強さによって双極I型障害と双極II型障害に分類されます。双極I型は躁状態が激しく社会生活に影響することが多く、双極II型は軽躁状態とうつ状態を繰り返すため見過ごされやすい傾向があります。
発症の原因は明確に特定されていませんが、脳内の神経伝達物質のバランスや遺伝的要因、環境要因が関与していると考えられています。日本における有病率はおよそ1〜2%とされ、決して珍しい病気ではありません。しかし、うつ状態の時に受診した場合、うつ病と診断されやすく、適切な治療までに時間がかかるケースもあります。
双極性障害が仕事で困ること
1. 安定出社ができない
双極性障害を抱える人は、気分の波によって体調の良し悪しが大きく変化します。うつ状態に入ると朝起きること自体が困難になり、出勤が続けられなくなることがあります。意欲が低下するため、遅刻や欠勤が増えやすく、結果として職場での信頼関係や評価に影響を及ぼす可能性があります。
2. 日によって仕事量に差が出る
躁状態のときはエネルギーが過剰になり、仕事に集中して大量の業務をこなすことがあります。しかし、判断力や注意力が低下している場合もあり、誤りやトラブルの原因になることがあります。一方、うつ状態では逆に仕事のペースが大幅に落ち、指示された業務すら進められないことがあります。このように日ごとの作業効率や成果に差が出やすい点が、職場での大きな困難につながります。
仕事を続けるための対策
1. 自身の気分の波を把握する
双極性障害を持つ人にとって、自分の気分の変化を客観的に理解することは重要です。気分日記やアプリを活用し、毎日の気分や睡眠、体調を記録することで、躁やうつへの移行を早めに察知できます。医師や支援者と共有することで、適切な対応や治療調整にもつながります。
2. うつ状態では無理をせず休暇を取る

うつ状態のときに無理をして仕事を続けると、症状が悪化し長期休養につながるリスクがあります。可能であれば、主治医の診断書を活用し、休職制度や有給休暇を利用することが望ましいです。会社に病状を開示するかどうかは個人の判断ですが、信頼できる上司や人事担当に伝えておくと柔軟な勤務調整を受けやすくなります。
3. 生活リズムを整える
双極性障害の症状は、生活リズムの乱れによって悪化しやすいといわれています。特に睡眠不足は躁状態を引き起こす要因となるため、毎日同じ時間に就寝・起床することが大切です。食事や運動も一定のリズムを保つことで、気分の安定に役立ちます。
4. 仕事内容の見直し
自分の得意・不得意を整理し、症状に合わせた働き方を模索することも必要です。例えば、期限が厳しい業務よりも、調整が可能な作業を中心に担当する、フルタイム勤務ではなく短時間勤務を選ぶなど、職務内容を工夫することで継続しやすくなります。また、テレワークやフレックスタイム制度を利用できる職場であれば、症状に合わせて柔軟に働ける可能性が高まります。
医療や支援の活用

双極性障害は適切な治療とサポートによってコントロールできる病気です。気分安定薬や抗精神病薬を中心とした薬物療法が基本であり、心理教育や認知行動療法といった精神療法も有効です。医師との定期的な面談に加え、就労支援機関やカウンセリングサービスを利用することで、職場での困難を軽減できます。
また、障害者雇用制度を利用すれば、配慮を受けながら働く道も開かれます。体調に応じた勤務時間の調整や、突発的な欠勤への理解を得られやすくなるため、長期的に安定して働く選択肢として有効です。
まとめ
双極性障害は、気分の波によって仕事に支障をきたすことが多い疾患です。安定した出社が難しい、日によって業務量に差が出るといった問題が生じやすい一方で、自身の気分を記録して変化を把握する、生活リズムを整える、必要なときには休暇を取るなどの工夫によって働き続けることは可能です。さらに、仕事内容を調整したり、医療や支援制度を活用したりすることで、症状を抱えながらも社会参加を維持できます。大切なのは、一人で抱え込まず医療者や支援者と連携し、自分に合った働き方を見つけることです。