知的障害とは、生まれつきまたは発達の過程において知的機能の発達が遅れる、あるいは偏りが見られる状態を指す。一般的に、IQ(知能指数)が70未満であること、さらに日常生活における適応能力の困難があることを基準に診断される。発達期(概ね18歳まで)にその特徴が現れる点も診断上の重要な要素である。単に知能の数値が低いというだけではなく、日常生活を送るうえでの実用的な力や社会的なやりとりの難しさも含めて総合的に判断される。
IQテストと日常生活能力の評価
知的障害の診断では、主にIQテストと日常生活能力の評価が用いられる。

- IQテスト:成人の場合はWAIS(ウェイス)、子どもの場合はWISC(ウィスク)が代表的な検査である。これらは言語理解や作業記憶、処理速度などを測定し、総合的な知能指数を算出する。
- 日常生活能力の判断:知的機能だけでなく、実際に生活を送るうえでの力も診断に欠かせない。大きく3つの領域に分けられる。
- 概念的領域:読み書き、計算、時間や金銭の理解など、抽象的な概念に関わる力。
- 社会的領域:人とのコミュニケーションや社会的判断、危険性の理解、対人関係を築く力。
- 実用的領域:食事や着替え、入浴、排泄など、日常生活に直結するスキルや仕事に従事できるかどうか。
これらを総合的に判断することで、知的障害の有無とその程度が明らかになる。
知的障害の4つの分類

知的障害はIQと適応機能に基づき、大きく4つの段階に分けられる。それぞれの特徴を見ていこう。
軽度(IQ51~70)
軽度の知的障害を持つ人は、支援があれば読み書きや算数といった学習もある程度可能である。ただし、学習の速度は緩やかで、抽象的な内容や複雑な文章の理解には難しさを抱えることが多い。
コミュニケーションはある程度可能だが、表現がパターン化しており柔軟性に欠ける傾向が見られる。社会的判断が未熟で、危険の察知やリスク回避が十分にできない場合もある。そのため、日常生活は自立できても一部の場面では支援を必要とする。
仕事においては、数字や複雑な概念を扱わない作業であれば従事できる。単純作業やルーチン化された業務に向いており、職場での環境調整があれば社会参加も可能である。
中等度(IQ36~50)
中等度の知的障害では、成人しても読み書きや計算の理解は小学校低学年程度にとどまることが多い。学習に長い時間を要するが、繰り返しの練習によって基本的なスキルを身につけることはできる。
コミュニケーションは単純なやりとりが中心であるが、友人関係や恋愛関係を築く力も備えている。ただし複雑な会話や社会的判断には支援が欠かせない。
日常生活は習得に時間がかかるものの、継続的な支援を受ければある程度の自立が可能である。仕事についても、数字や概念的な処理を必要としない単純作業であれば従事できる。支援者の指導や環境調整がカギとなる。
重度(IQ21~35)
重度の知的障害の場合、文字や計算、時間の理解は非常に難しい。概念的領域での発達は限定的であり、抽象的な課題に対応することは困難である。
コミュニケーションは単純な会話や身振りを中心に行われる。複雑な意思疎通は難しいが、身近な人との関わりの中で感情を伝えることは可能である。
日常生活においては、多くの場面で援助が必要になる。食事や排泄、身支度なども自立が難しい場合があり、介助が求められる。生活を送るためには継続的な支援体制が欠かせない。
最重度(IQ20以下)
最重度の知的障害を持つ人は、会話や身振りによるコミュニケーション自体が困難である。意思を伝える手段が限られており、周囲の人が表情や行動の変化から気持ちを読み取る必要がある。
日常生活においては、ほぼすべての場面で介助が必要となる。食事、入浴、排泄など基本的な行為を一人で行うことができないため、家族や支援者のサポートが欠かせない。
社会生活への参加は限定的であるが、安心できる環境の中で過ごすことで心の安定が得られる。
知的障害と社会的支援

知的障害のある人が生活を送るには、家族や支援機関の協力が不可欠である。教育面では特別支援学級や特別支援学校で個々の特性に合わせた教育を受けることができる。就労面では、障害者雇用制度や福祉的就労が選択肢となり、環境を整えることで社会参加が可能になる。
また、療育手帳の交付を受けることで、医療費や交通費の助成、福祉サービスの利用がしやすくなる。地域での生活を支える制度は多岐にわたるため、支援につながることが生活の安定につながる。
まとめ
知的障害はIQの数値だけでなく、日常生活に必要な力や社会的適応力を含めて総合的に判断される。軽度から最重度まで幅広い段階があり、それぞれに応じた支援の形が必要となる。
知的障害を持つ人々が自分らしく生活するためには、周囲の理解と適切な支援が欠かせない。社会全体が障害への正しい理解を深め、環境を整えることで、障害を持つ人も持たない人も共に安心して暮らせる社会が実現できるだろう。