ADHDと双極性障害(躁うつ病)の違い【大人の発達障害】

ADHDと双極性障害(躁うつ病)の違い

ADHDとは

ADHD(注意欠如・多動症)は、生まれつきの脳機能の偏りに起因する発達障害であり、不注意、衝動性、多動性を特徴とします。不注意の面では、物事に集中できずにうっかりミスを繰り返すことや、忘れ物が多いことが典型的です。衝動性は思いつきで行動しやすく、結果を考える前に言葉や行動に移してしまう傾向を意味します。多動性は落ち着きのなさや常に体を動かしたくなる感覚として現れ、特に子どもの頃に目立ちます。大人になると目に見える多動は弱まることもありますが、頭の中が常に忙しく動いている感覚を持ちやすいのが特徴です。

ADHDは知能や能力の問題ではなく、脳の働き方に偏りがあるために、生活や人間関係、仕事に影響を与える障害です。適切な環境調整や薬物療法、認知行動療法などによって改善が期待できます。

双極性障害とは

双極性障害は「気分障害」のひとつであり、抑うつ状態と躁状態を繰り返す病気です。抑うつ状態では気分の落ち込みや意欲低下、集中力の低下、強い疲労感、不眠または過眠、食欲の減退が目立ちます。一方、躁状態では高揚感や万能感が強まり、通常では考えられないほどの自信を持つようになります。その結果、浪費や無謀な挑戦を繰り返したり、イライラしやすくなったりして、周囲との関係に摩擦を生みやすくなります。特に躁状態は人間関係の衝突や金銭的トラブルに直結しやすいため、本人だけでなく周囲にも大きな負担を与えることがあります。

双極性障害は「気分の波」が周期的に訪れるのが特徴であり、時には数週間から数か月単位でうつと躁が入れ替わるケースもあれば、短期間で急速に変化するタイプもあります。

ADHDと双極性障害の併発率

ADHDと双極性障害の併発率

発達障害は他の精神疾患と併発することが多いことが知られています。特にADHDは、うつ病や不安障害、睡眠障害などと高い割合で同時に見られます。統計的には、ADHDを持つ人のうち70~80%が何らかの精神疾患を併発していると報告されており、その中で双極性障害との併発率は20%前後とされています。つまりADHDと双極性障害が同時に存在することは決して珍しくないのです。

併発している場合には診断が難しく、単にADHDなのか、双極性障害なのか、それとも両方が合併しているのかを見極めることが重要になります。診断を誤ると薬の選び方や治療方針に大きな影響を及ぼすため、専門医による丁寧な評価が欠かせません。

ADHDと双極性障害の類似点

ADHDと双極性障害には症状の重なりが見られるため、混同されやすい側面があります。

  • 気分の上下が激しい
    ADHDの人も、やる気に満ちて活動的な時期と、集中できず停滞する時期があるため、感情の波が激しいように見えます。双極性障害も気分の上がり下がりが顕著であるため、この点が類似しています。
  • 不注意と集中力の低下
    ADHDでは持続的な注意が難しく、タスクを最後までやり遂げるのが苦手です。一方、双極性障害の抑うつ状態でも集中力が著しく低下し、似たように物事を進められなくなります。外見上は同じ「集中力が続かない」という特徴として観察されます。
  • 衝動性と躁状態の行動
    ADHDの衝動性は、欲しい物をすぐに買ってしまう、相手の話を最後まで聞かずに発言するなどの形で現れます。双極性障害の躁状態でも浪費や怒りっぽさが目立つため、周囲からは似たような行動に映ります。

こうした共通点があるため、本人や家族が「ADHDの症状なのか、それとも双極性障害の症状なのか」と混乱するのは自然なことです。

ADHDと双極性障害の違い

一方で、両者には明確な違いも存在します。

  • 症状の持続性
    ADHDの症状は生まれつき持っているものであり、子どもの頃から一貫して観察されます。それに対して双極性障害は青年期以降に発症することが多く、気分の波が周期的に現れます。
  • 気分変動の仕組み
    ADHDは環境や状況に影響されて一時的に感情の起伏が激しくなることがありますが、双極性障害の気分変動は病的で周期的です。つまり、ADHDの気分の上下は「状況反応性」であり、双極性障害は「疾患特有のサイクル」によるものです。
  • 治療法の違い
    ADHDには中枢神経刺激薬や非刺激薬が処方され、注意力や衝動性のコントロールを助けます。双極性障害では気分安定薬や抗精神病薬が中心であり、躁やうつの波を抑えることが目的となります。もし誤ってADHDの薬を双極性障害の患者に使うと、躁状態を悪化させる恐れがあるため注意が必要です。

併発時の課題

併発時の課題

ADHDと双極性障害が併発している場合、診断も治療も複雑になります。例えば、ADHDの衝動性を抑えるための薬を使いたい一方で、双極性障害の躁を悪化させるリスクがあるため、薬の選び方には細心の注意が求められます。さらに、本人が抱える日常生活の困難は二重に重なり、仕事や人間関係でのトラブルが増えることもあります。

このような場合には、薬物療法に加えて、生活習慣の安定、心理社会的なサポート、家族への教育が欠かせません。どちらの障害にも共通するのは「自己管理が難しい」という特徴であり、医療だけでなく周囲の理解と支援が大きな役割を果たします。

まとめ

まとめ

ADHDと双極性障害は、いずれも「気分の波」や「衝動的な行動」という点で似た特徴を持ちますが、症状の持続性や発症の仕組み、治療法には明確な違いがあります。ADHDは生まれつきの脳機能の偏りに由来し、子どもの頃から一貫して現れる特徴です。一方、双極性障害は思春期から青年期に発症し、周期的に躁と鬱を繰り返します。

併発率が一定数存在するため、どちらか一方の診断にとどめず、両方の可能性を視野に入れて評価することが必要です。そして治療方針は、症状の主体がどちらかによって大きく変わります。ADHDには刺激薬や非刺激薬、双極性障害には気分安定薬や抗精神病薬が用いられるため、誤診は大きなリスクを伴います。

重要なのは、自己判断せず専門医の診察を受けることです。似ているようで異なる両者を正しく区別することが、適切な治療につながり、日常生活の安定や人間関係の改善にも直結します。ADHDか双極性障害か、あるいはその両方かを見極め、最適な治療を選ぶことが、本人の人生をより良い方向へ導く第一歩になるのです。