障害や難病を抱える方にとって、自分に合った仕事を見つけることは決して容易ではありません。体調の波がある、コミュニケーションに不安がある、職場環境が自分に合わないといった理由から、就職活動や就労継続に困難を感じる人は少なくありません。そうした方を支える制度のひとつが「就労移行支援」です。本記事では、その概要や具体的な支援内容、利用期間、注意点などを詳しく解説していきます。
就労移行支援とは何か
就労移行支援とは、障害福祉サービスの一種であり、障害や難病を抱える方が自分に合った職業を見つけ、安定して働き続けられるようサポートするための施設です。厚生労働省が定める制度に基づいて運営されており、全国各地に事業所があります。
対象となるのは、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などで、就職を希望している方です。就職を目指す準備段階にある人が利用することで、職業スキルだけでなく生活リズムや自己管理能力も養い、安定した社会参加を可能にすることを目的としています。
就労移行支援で受けられるサポート内容

就労移行支援では、単に仕事探しを支援するだけではなく、生活や体調の基盤づくりから始め、就職後も長く働き続けられるようなサポートが用意されています。主な支援内容は以下のとおりです。
1. 体調管理のサポート
障害や難病のある方にとって、体調の安定は就労の基盤となります。就労移行支援では、規則正しい生活リズムの構築や、ストレス対処法の習得、服薬管理の支援などを通じて、安定した通所・就労につながるよう指導が行われます。
2. SST(ソーシャルスキルトレーニング)
社会生活や職場で必要となるコミュニケーション能力を身につける訓練です。挨拶の仕方や報連相(報告・連絡・相談)の方法、トラブルが起きた際の対処法などをロールプレイを通して学びます。人間関係の不安を軽減し、円滑に職場に馴染む力を高めることができます。
3. スキルアップ支援
パソコン操作やビジネスマナー、資格取得の支援など、就職に直結するスキルの習得をサポートします。事業所によっては専門的な研修やプログラムを用意しているところもあり、事務職・軽作業・IT分野など多様な就労先を想定した学習機会が提供されます。
4. 就活支援
履歴書・職務経歴書の作成サポート、模擬面接、求人紹介、企業とのマッチングなど、具体的な就職活動の支援が行われます。支援員が本人の特性や希望を考慮しながら企業と調整を行うため、より本人に合った職場を見つけやすくなります。
5. 定着支援
就職はゴールではなくスタートです。働き始めた後に体調や人間関係の不調から離職してしまうケースも少なくありません。そのため、就労移行支援では就職後も定着支援を行い、企業との橋渡し役となってトラブルの早期解決をサポートします。
利用期間について
就労移行支援の利用期間は原則として 2年間 とされています。ただし、一定の条件を満たす場合には期間の延長や再利用が認められています。ここではその具体的な仕組みについて解説します。
原則は2年間
利用者は登録した日から最長2年間サービスを受けることができます。この間にスキルを習得し、就職活動を進めていくのが基本的な流れです。
延長のケース
企業実習中であったり、就職先が決定して雇用開始日を待っている場合には、最大1年までの延長が認められることがあります。つまり、最長で3年間利用できるケースもあるということです。
中断と再利用
体調不良や家庭の事情などで利用を中断することも可能です。ただし、利用期間は「実際に通った日数」ではなく「登録期間」でカウントされます。そのため、安定した通所が難しい場合には、無理に通い続けるよりも中断を検討する方が賢明です。また、中断から2年以内であれば再利用が可能です。
就職後の再利用
一度就職した後に離職した場合、再び就労移行支援を利用できることがあります。その際は利用期間がリセットされるケースもあり、再度2年間の枠が与えられる場合があります。
実際の平均利用期間
制度上は2年間が上限ですが、実際の平均利用期間は 約11か月 と言われています。多くの利用者は1年前後で就職に至るケースが多いのです。なかには最短3か月で就職する人もいますが、この場合は定着率が低くなる傾向があります。
その理由は、支援員が本人の障害特性や必要な配慮を十分に理解する時間が不足していること、また企業との情報共有や環境調整が不十分なまま就職に至ってしまうためです。短期間での就職は一見効率的に見えますが、離職リスクを高める結果になりやすいため注意が必要です。
利用する際のポイント
就労移行支援を有効に活用するためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。

- 焦らず基盤を整える
早期就職を目指すことも大切ですが、生活リズムや体調管理が安定していない状態では長く働き続けることは難しくなります。まずは無理のない通所ペースから始め、基盤を固めることを優先しましょう。 - 自分に合った事業所を選ぶ
事業所ごとにプログラムや雰囲気は大きく異なります。見学や体験利用を通じて、自分の特性に合った場所を見極めることが重要です。 - 支援員との信頼関係を築く
支援員は就職活動や企業との調整において心強い存在です。困りごとや不安を隠さず相談することで、より適切な支援を受けられます。 - 就職後の定着を見据える
ゴールは「就職すること」ではなく「働き続けること」です。そのため、訓練段階から職場での配慮や自分の特性について理解を深め、就職後も安定して働けるように準備しておくことが大切です。
まとめ
就労移行支援は、障害や難病を持つ方が自分に合った仕事を見つけ、安定して働き続けるための大切な制度です。体調管理、コミュニケーション訓練、スキルアップ、就職活動支援、定着支援といった幅広いサポートを受けられるため、一人で就職を目指すよりも安心して取り組むことができます。
利用期間は原則2年間で、平均すると11か月程度で就職に至る方が多いですが、焦って短期間で就職すると定着率が下がる傾向もあります。大切なのは、無理をせず自分に合ったペースで準備を進め、支援員や企業と連携を取りながら安心して働ける環境を整えることです。
就労移行支援をうまく活用することで、自分らしい働き方を実現し、長く安心して社会に参加していく道が開けるでしょう。