日本には、障がいのある方が社会で生活を送るうえで必要な支援を受けやすくするための制度が整えられています。そのなかでも中心的な役割を果たすのが「障がい者手帳」です。手帳を取得することで、医療費の助成や税制優遇、公共料金の割引などの支援を受けられるだけでなく、就労支援や福祉サービスを利用しやすくなるという大きな利点があります。
しかし一方で、手帳について誤解が広がっていることも少なくありません。「手帳を持つと一般企業で働けないのでは」「取得したら必ず職場に見せなければならないのでは」といった誤解を抱いている方もいます。そこで今回は、障がい者手帳の種類、取得の手順、メリットや注意点について詳しく解説していきます。
障がい者手帳の3つの種類

障がい者手帳には大きく分けて3つの種類があります。それぞれ対象となる障害や等級区分が異なり、受けられる支援内容も多少の違いがあります。
身体障害者手帳
身体障害者手帳は、視覚障害や聴覚障害、肢体不自由、内部障害など、身体に一定以上の障害がある方を対象としています。障害の程度に応じて1級から6級までの等級が定められ、等級が重いほど受けられる支援は大きくなります。公共交通機関の割引や税制上の控除、福祉サービスの利用などが代表的な支援です。
療育手帳
療育手帳は知的障害のある方を対象とするもので、おおむねIQ70以下が基準とされています。区分は自治体によって呼び方や基準に差はありますが、一般的に「A1・A2・B1・B2」に分類されます。Aは重度、Bは中度や軽度を表しています。療育手帳を持つことで、福祉サービスの利用や就労支援、税制優遇など幅広い支援を受けられるようになります。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、うつ病や統合失調症、双極性障害などの精神疾患を持つ方を対象としています。また、ASD(自閉スペクトラム症)やADHDといった発達障害も対象に含まれます。等級は1級から3級まであり、1級は日常生活に全面的な支援が必要な状態、2級は生活や就労に相当の制約がある状態、3級は社会生活に一定の困難がある状態を表します。取得することで、医療費の助成や税制上の優遇、交通機関や公共料金の割引、就労支援サービスの利用が可能になります。
発達障害と障がい者手帳
発達障害を持つ方の場合、障がい者手帳を取得することができます。単独で発達障害がある場合は精神障害者保健福祉手帳の対象となり、うつ症状や不安障害を伴っているケースでも同様にこの手帳で対応されます。
一方、発達障害に加えて知的障害を併発している場合は、療育手帳を取得するケースが一般的です。両方を同時に取得することは制度上可能ですが、実際には大きなメリットはなく、どちらかを選ぶのが一般的です。支援の内容が重複する部分も多いためです。
手帳を持つメリット
障がい者手帳を取得すると、生活や就労の面でさまざまなメリットがあります。代表的なものを挙げると以下の通りです。
- 医療費の助成を受けられる
- 所得税や住民税の控除、相続税や贈与税の優遇を受けられる
- 公共交通機関や携帯電話、電気料金などの割引制度を利用できる
- 障がい者雇用枠で働けるようになる
- 障害者職業センターや就労移行支援事業所など、専門的な支援を受けやすくなる
これらの制度は、生活の負担を軽減するとともに、自立や社会参加を後押しする役割を持っています。特に経済的な面での支援は大きく、医療や生活費の不安を和らげる効果があります。
よくある誤解
障がい者手帳に関しては、社会のなかで誤解が広がっていることがあります。
まず「手帳を取得すると障がい者雇用でしか働けない」という思い込みです。これは誤りで、一般就労ももちろん可能です。障がい者雇用はあくまで選択肢のひとつに過ぎず、希望や能力に応じて働き方を選べます。
また「手帳を持っていることを必ず開示しなければならない」という考え方も誤解です。手帳の有無を周囲に伝える義務はなく、職場や学校に提出する必要もありません。自分が支援を必要としている場合に、適切なタイミングで伝えるかどうかを判断できます。
手帳取得の流れ
障がい者手帳を取得するには、各自治体の障害福祉課で申請を行います。
必要書類
- 申請書
- 医師の診断書、または障害年金証書
- 本人の顔写真
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
注意点
診断を受けただけではすぐに申請できるわけではありません。手帳の交付には「病状や障害の状態が6か月以上継続していること」が条件とされています。そのため、一定期間の経過観察を経て申請に進む流れになることが多いです。
まとめ
障がい者手帳は、生活や就労の場面で大きな支援を受けられる大切な制度です。身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類があり、それぞれ対象となる障害や区分が異なります。発達障害の場合は精神障害者保健福祉手帳が対象となり、知的障害を伴う場合は療育手帳を取得するのが一般的です。
取得することで、医療費や税制の優遇、交通費や公共料金の割引、就労支援など多くのメリットを享受できます。一方で「障がい者雇用でしか働けない」「必ず開示しなければならない」といった誤解も広がっていますが、実際にはそのような義務はなく、一般就労も可能です。
手帳取得を検討する際は、自身の生活や働き方を踏まえて必要な支援を整理し、自治体の窓口に相談することが重要です。正しい知識を持つことで、不安を減らし、自分らしい生活を築くための一歩を踏み出せるでしょう。