就労移行支援とは、障害福祉サービスのひとつで、厚生労働省が所管する事業です。対象となるのは、18歳以上65歳未満で、一般企業への就職を目指す障がいや難病のある方。発達障害、精神障害、知的障害、身体障害など、さまざまな障がいに対応しており、医師の診断書や障害者手帳が必要となるケースが多くあります。
この制度の目的は、就職活動の支援だけでなく、働くために必要なスキルや生活リズムの整え方を学ぶ機会を提供することです。通所型の事業所で、日中一定の時間を過ごしながら訓練を受け、自信をつけて就職を目指します。利用期間は原則2年間で、必要に応じて延長されることもあります。
就労移行支援で受けられるサポート

就労移行支援事業所では、以下のような多面的な支援を受けることができます。
● 体調管理や生活リズムの支援
就労の前提として、安定した生活リズムの確立が重要です。朝起きて身支度を整え、決まった時間に通所するという基本的な生活習慣を身につけることから始まります。体調の波がある方には、無理のないスケジュールを組み、必要に応じて医療機関との連携も行います。
● SST(ソーシャルスキルトレーニング)
SSTとは、職場や社会で求められる対人スキルを練習するプログラムです。挨拶や報告・連絡・相談の仕方、トラブルが起きたときの対応、感情のコントロール方法など、実践的な場面を想定してロールプレイなどを通じて学びます。
● ビジネススキル・PCスキルの習得
就労移行支援では、Word、Excelなどのパソコン操作や、ビジネスマナー、電話応対、名刺交換などの基礎的なビジネススキルを学ぶことができます。事業所によっては、eラーニングや資格取得に向けた学習も支援されており、実務に活かせる知識の習得が可能です。
● 就職活動の支援
履歴書や職務経歴書の書き方、面接練習、企業研究など、就職活動全般について個別にサポートが行われます。ハローワークと連携して求人情報の提供を受けることもあり、事業所が独自に企業とつながりを持ち、そこから求人が紹介されるケースもあります。
● 職場定着のサポート
就職がゴールではなく、「就職後に安定して働き続けること」が重要です。そのため、就職後も定期的な面談や企業訪問を通じて、職場での悩みや不安に対してアドバイスが受けられる体制が整えられています。必要に応じて職場との橋渡し役として調整も行います。
ハローワークとの違い
就職支援という点ではハローワークもありますが、就労移行支援との大きな違いは、「障がいに特化したサポートがあるかどうか」です。
- ハローワークは、主に職業斡旋を目的とした公的機関であり、障がいの有無を問わず広く利用できます。特定のスキルの講習や求人紹介を受けられる一方、障がいへの配慮や体調に応じた訓練までは行いません。
- 就労移行支援は、障がいや病気の特性に配慮した上で、生活全般から就労までをトータルで支援します。体調管理や人間関係の課題も踏まえ、個々のペースに合わせて進められるため、「いきなり就職は不安」という方に向いています。
利用料金について
就労移行支援の利用は、原則無料です。正式には「利用者負担額」として費用が発生する仕組みですが、前年の世帯収入に応じて負担の有無が決まります。たとえば、生活保護世帯や非課税世帯の場合は自己負担ゼロで、収入が一定額を超えた場合にのみ月額上限額が設定されます。
また、交通費や昼食代などは自己負担となることが多いため、事業所によっては独自に交通費補助やお弁当の提供などを行っているケースもあります。
就労移行支援から目指せる仕事の例

就労移行支援を利用して、実際に就職する方が多い職種には以下のようなものがあります。
- 医療・介護・福祉分野:福祉施設や病院での補助作業、受付など
- サービス業・接客業:飲食店のホールスタッフ、品出し、清掃
- 警備や清掃業務:施設内警備、ビル清掃、巡回業務
- 製造業・工場・倉庫作業:軽作業、ピッキング、ライン作業
- 事務職:データ入力、書類整理、郵送物の仕分け
就労移行支援では、こうした業種に必要なスキルを学ぶだけでなく、職場実習を通じて実際の業務を体験することも可能です。実習先での働きぶりが評価され、そのまま雇用につながるケースも珍しくありません。
まとめ
就労移行支援は、障がいや病気によって働くことに不安を感じている方にとって、大きな支えとなる制度です。ただ仕事を紹介するだけでなく、「働くまでの準備」と「働き続ける力」を育むための包括的なサポートが用意されています。自分に合った仕事を見つけ、安心して社会参加をするための第一歩として、利用を検討してみる価値は十分にあります。
就労に不安を抱える方は、まずはお住まいの市区町村の障害福祉窓口や、近くの就労移行支援事業所に相談してみるとよいでしょう。あなたにとって働きやすい環境が、きっと見つかるはずです。