【アスペルガー】ASDのこだわり癖の例と対処法を解説

ASD(自閉スペクトラム症)は、生まれつきの脳機能の偏りを原因とする発達障害の一つである。主に対人関係の難しさや強いこだわりといった特徴が現れやすく、その特性が本人の生活に大きな影響を及ぼすことがある。とくに「こだわり」は、日常生活や職場環境で周囲との摩擦を生みやすく、適切な理解と対応が求められる。

ASDのこだわりとは

ASDのこだわりとは

ASDのある人に見られるこだわりとは、単なる「好き嫌い」や「好み」とは異なる。本人にとっては、安心感や秩序を保つために必要な行動であることが多く、無理に変えようとすると強い不安や混乱を招くことがある。

具体的なこだわりの例としては、以下のようなものが挙げられる。

  • ルールや手順への強いこだわり:一度決めた手順を必ず守らないと気が済まない。新しい手順や方法に変えることが非常に困難。
  • 細部への過剰な注意:資料のフォントサイズ、図の配置、データの並び順など、他者から見れば些細な点に強くこだわる。

これらのこだわりが顕著になると、作業スピードの低下や柔軟な対応ができないといった問題が生じる。本人がいくら努力しても、こだわりを抑えることが難しい場合も多く、単に「わがまま」「頑固」と解釈するのは誤りである。

こだわりの背景にある「不安感」

ASDの人がこだわりを強く持つ理由には、根底にある「不安感」が関係していることが多い。予定が変わったり、曖昧な表現で指示されたりすると、何をどうすれば良いのかが理解できず、混乱と不安を抱える。その不安を打ち消すために、決まったルールや手順に固執するという行動が起きる。曖昧さを回避し、確実に成果を出すための手段として、ルールや手順、細部に強くこだわるのである。

ASDのこだわりへの対処法

ASDのこだわりへの対処法

こだわりを無理にやめさせようとすると、本人の混乱や反発を招きやすい。重要なのは、こだわりの背景を理解した上で、本人が安心して変化に対応できる環境を整えることである。

以下に、実際に効果があるとされる対処法を紹介する。

1. 想定される変化を事前に明確に伝える

急な変更はASDの人にとって大きなストレスとなるため、変化がある場合はできるだけ早く予告し、詳細を伝えることが重要である。たとえば「来週から会議の開始時刻が30分早まる」といった場合、その理由や影響範囲を説明することで、本人の不安が軽減されやすくなる。

2. 変更点とそのメリットを具体的に伝える

「手順が変わった」「ルールが新しくなった」といった変更が必要な場合は、その目的やメリットを丁寧に説明する。たとえば「この方法に変えると作業時間が半分になる」「このルールにするとミスが減る」といった明確な利点を伝えることで、納得感が得られやすい。

3. 判断基準やゴールを明確に示す

曖昧な指示はできるだけ避ける。「適当に」「なんとなく」「臨機応変に」といった表現は避け、具体的な指示や完成イメージを共有することが大切である。たとえば、「A4で3ページ以内にまとめる」「この3点を必ず入れる」など、判断基準を明示することで、混乱を防ぎやすくなる。

4. 本人のこだわりを尊重しつつ、柔軟な折り合いを探す

どうしても本人が譲れない部分については、全面的に変えようとするのではなく、本人が納得できる落とし所を一緒に探ることが有効である。たとえば「全体の構成は任せるが、提出形式だけは統一してほしい」といった形で、こだわりと業務要件の両立を目指す。

こだわりは「理由」がなくなれば薄れていく

こだわりは「理由」がなくなれば薄れていく

ASDの人のこだわりは、単に性格や頑固さの表れではなく、「混乱したくない」「失敗したくない」という切実な思いからくる行動である。そのため、不安や混乱の要因が解消されれば、こだわりそのものが徐々に薄れていくこともある。

たとえば、変更に慣れたり、指示の出し方に安心感を持てるようになったりすれば、過剰な手順へのこだわりも少しずつ和らいでいく。つまり、こだわりは「その人の本質的な性質」ではなく、「環境との相互作用」によって変化しうる部分でもある。

おわりに

ASDのある人が抱える「こだわり」は、周囲にとって理解しづらい部分かもしれない。しかし、その背景には強い不安感や曖昧さへの苦手意識があることを理解することで、対処の仕方が見えてくる。本人にとって安心できる環境を整え、変化を予測可能なものにすることで、こだわりは和らぎ、よりスムーズなコミュニケーションが可能になる。柔軟性は強制ではなく、信頼の積み重ねのなかで育まれるものである。そのことを忘れず、支援に取り組むことが求められる。