躁うつ病(双極性障害)の治療にはさまざまな薬が使用されますが、今回はその中でも代表的な気分安定剤であるバルプロ酸(デパケン)について詳しく見ていきたいと思います。
バルプロ酸は躁状態やイライラに対する効果が早く現れることが期待できる薬ですが、うつ症状への効果は限定的であり、安全に使用するためには血中濃度の測定が必要となる点が特徴です。
バルプロ酸とは? その適応と剤型

バルプロ酸の適応症
バルプロ酸は、主に以下の疾患の治療に用いられます。
- 躁うつ病(双極性障害)
気分の波を安定させる目的で使用されます。
特に躁状態やイライラが強い場合に効果が期待できます。 - てんかん
抗てんかん薬として、発作の抑制に用いられます。 - 片頭痛
片頭痛発作の予防薬として使用されることがあります。
バルプロ酸の剤型
バルプロ酸にはいくつかの剤型がありますが、主に使用されるのは以下の2種類です。
・ デパケン(通常型)
速やかに効果が現れるタイプの錠剤・顆粒剤です。
・ デパケンR(徐放錠)
ゆっくりと効果を発揮する徐放錠であり、臨床ではこのタイプがよく使用されます。
服薬回数が少なくて済むため、飲み忘れを防ぎやすいというメリットもあります。
躁うつ病と気分安定剤の役割
躁うつ病とは
躁うつ病(双極性障害)は、うつ状態と躁状態を周期的に繰り返す脳の疾患です。
うつ病とは異なり、脳の不調のメカニズムが異なるため、治療には気分安定剤が主に用いられます。
気分安定剤の役割
気分安定剤は、躁うつ病の症状を安定させ、再発を予防する目的で使用されます。
具体的には以下の3つの効果が期待されます。
- 躁状態の改善
- うつ状態の改善(ただし薬によって効果に差がある)
- 再発予防
また、気分安定剤は再発予防の観点から、症状が安定している場合でも継続的に服用することが推奨されます。
バルプロ酸の特徴と臨床での位置づけ

バルプロ酸の効果
バルプロ酸は、以下のような効果が期待されます。
- 躁状態の改善
効果が早く、特にイライラを伴う躁状態に有効です。 - うつ状態の改善
うつへの効果は限定的とされています。 - 再発予防
ある程度の効果は期待できるものの、再発予防の第一選択薬はリチウムであることが多いです。
バルプロ酸のメリット
・ 臨床で使いやすい薬
・ 不機嫌・イライラが強い躁状態に効果的
・ 急速交代型(躁とうつの切り替わりが早い)にも有効
・ 急な副作用が少ない(発疹や震えなどの中断を要する副作用が少ない)
・ 1日1回の服用で済む(リチウムと比較して安全性が高い)
バルプロ酸のデメリット
・ うつ状態へのエビデンス(科学的根拠)が弱い
・ 肝障害などの副作用が比較的多い
・ 妊娠時のリスク(先天性奇形のリスクがある)
バルプロ酸の副作用と血中濃度管理

代表的な副作用
- 肝障害
肝臓に負担がかかることが指摘されています。定期的な血液検査が推奨されます。 - 眠気・だるさ
特に服用量が多いときに現れやすい副作用です。 - 脱毛
個人差がありますが、毛が抜けやすくなることがあります。
血中濃度の管理
・ バルプロ酸の有効血中濃度は50~100μg/mLとされています。
・ 100μg/mLを超えると副作用のリスクが高まるため、定期的な血中濃度測定が重要です。
過量摂取時のリスク
・ 肝障害の悪化
・ 意識障害(高アンモニア血症のリスク)
バルプロ酸の使用に関する注意点と具体的な使用方法

ラモトリギンとの併用
・ ラモトリギン(ラミクタール)はうつに有効な気分安定剤であり、バルプロ酸と併用することがあります。
・ しかし、バルプロ酸はラモトリギンの血中濃度を上昇させ、副作用のリスクを高めるため、慎重に使用する必要があります。
妊娠とバルプロ酸
・ 妊娠時にバルプロ酸を服用すると、胎児への影響(先天性奇形)が指摘されている
・ 急な中止は躁うつ病の悪化を招くため、医師と相談の上、慎重に対応することが重要
・ 代替薬として抗精神病薬を検討することもあるが、効果の相性を考慮する必要がある
基本的な服用方法
・ 初期投与量は1日200~400mg、原則1日1回
・ 副作用の程度を見ながら増減を検討
・ 早期に血中濃度や肝機能をチェックし、適正量を見極める
長期的な管理
・ 数カ月ごとに血中濃度・肝機能を確認
・ 躁が強い場合は抗精神病薬を併用
・ うつが続く場合は抗精神病薬(抗うつ作用のあるもの)を追加
・ 不安定な場合はリチウム併用を検討
・ 妊娠時は医師と相談の上、薬の変更を検討
まとめ
バルプロ酸(デパケン)は、特に躁・イライラが強いタイプの躁うつ病に効果的な気分安定剤です。
定期的な血液検査が必要な薬であり、特に肝機能や血中濃度の管理が重要になります。
また、妊娠時にはリスクがあるため、主治医と慎重に相談することが推奨されます。
躁うつ病の治療には複数の選択肢があり、個々の症状に応じた適切な薬の選択が大切です。