自分で決める力を育む精神医学 ~主体的な選択が人生を変える~
日々の生活の中で、人はさまざまな選択に直面します。
それは、今日の食事を何にするかという小さな決定から、人生を左右するような大きな決断に至るまで、多岐にわたります。
しかし、すべての選択が成功するとは限らず、ときには間違いも犯してしまいます。このような中で、間違いを悔やんで立ち止まる人と、失敗を糧に次へ進む人とが分かれるのはなぜなのでしょうか。
その鍵となるのが、「自分で決める力」ではないでしょうか。
本記事では、精神医学の観点から「自分で決める」ことの重要性を考え、その力をどう育んでいけばよいかについて解説します。
自分を形成する「選択と決定」の積み重ね
人間の成長を考えるとき、「素質」と「経験」という2つの要素が大きな役割を果たします。もともとの生まれ持った素質に、人生の中で積み重ねるさまざまな経験が加わることで、その人の性格や能力、価値観が形成されていきます。そして、経験とは「行動の繰り返し」によって得られるものです。
さらに行動の前には、必ず「選ぶ」と「決める」というプロセスがあります。つまり、「選ぶ→決める→行動する」というサイクルが繰り返されることで、人は経験を積み、成長していくのです。
自分で決めることがもたらす影響
「自分で決める」ことには、次のようなポジティブな影響があります。
- 経験の質が向上する
自分で選び、決めて行動した結果がうまくいかない場合でも、次の行動を改善することで、経験の質が少しずつ高まっていきます。 - 自己制御感が上がる
「自分で決めた」という感覚が強まると、自分の行動を自分でコントロールできているという「自己制御感」が高まり、失敗しても立ち直りやすくなります。 - 自己肯定感が高まる
うまくいったときには、「自分の決断が正しかった」と感じられ、自己肯定感がさらに向上します。 - 他人に巻き込まれにくくなる
自分の判断基準や選択の軸がしっかりしていると、周囲の意見に左右されにくくなり、人に振り回されることが減ります。
一方で、「自分で決めるのは自己中心的ではないか」と感じる方もいるかもしれません。しかし、自己決定は必ずしも自分本位なものではありません。
自己決定は「相手への配慮」も含めた選択
日本では、自己決定に対して「協調性がない」「他人を思いやらない」といった否定的なイメージを持たれがちです。しかし、自己決定は「自分の利益だけを優先すること」とは異なります。実際には、自分にとってのメリットだけでなく、相手や環境への影響も考慮した上で、協調するかどうかを選ぶのが、成熟した自己決定です。
さらに、多くの場合、全体の利益を考えて決断したほうが、結果的に自分にとってもプラスになるという「全体最適」の効果が生じます。こうしたバランスの取れた自己決定が、自分や周囲の人々に良い影響を与えていくのです。
自己決定を阻む「不安」とその対策
とはいえ、「自分で決めるのが怖い」という不安を抱える方も多いでしょう。この不安が、自己決定の大きなハードルとなります。
自己決定が苦手な方には、次のような特徴が見られることがあります。
- 不安障害の傾向があり、決断する際に強い不安を感じる
- 依存性パーソナリティ障害や回避性パーソナリティ障害があり、他人に頼りがちな傾向がある
- 幼少期に自己決定を禁じられた経験があり、自分で決める習慣が育っていない
決断にはリスクが伴うため、間違えたときに起こりうる以下のようなネガティブな結果を恐れてしまうのです。
- 自分が損をする
- 他人に迷惑をかける
- 後悔する
- 他人から批判される
決断力を鍛える「系統的脱感作法」
こうした不安を克服するために有効なのが、心理療法の一種である「系統的脱感作法」です。これは、恐怖や不安を感じる対象に対して、少しずつ慣らしていく方法です。たとえば、パニック障害や恐怖症などの治療にも用いられています。
自己決定の不安に対しても、この方法を応用することが可能です。いきなり重い決断をするのではなく、「今日の食事を何にするか」などの小さな決定から始めて、徐々に慣らしていくのがポイントです。このプロセスを通じて、少しずつ「決める力」を鍛えていくことができます。
まとめ:自分で決める力が人生を動かす
人は、選択と行動の積み重ねによって成長します。そのため、主体的に「自分で決める」ことは、人生を充実させるために非常に重要です。
自己決定は一見、自己中心的に見えることもありますが、実際には相手や環境への配慮を含めたバランスの取れた判断が可能です。
自己決定を阻む最大のハードルは「不安」ですが、この不安を克服するためには、小さな決定から始めて少しずつ慣らしていくことが有効です。こうして「決める力」を育むことで、失敗しても次の成功につながる経験が積み重なり、人生をより前向きに切り開いていくことができるのです。
人生の選択肢に直面したとき、自分の意志で一歩を踏み出す力を大切にしていきましょう。それが、あなた自身の成長と幸せを築く原動力となるのです。