統合失調症の陰性症状とその対策
はじめに
統合失調症の療養において、幻聴や妄想といった陽性症状が注目されることが多いですが、急性期を越えた後に注意すべきなのが「陰性症状」です。意欲の慢性的な低下が目立ち、生活に大きな影響を及ぼすことがあります。長期的な視点で見ても、陰性症状は日常生活に困難をもたらすため、適切な対策を講じることが重要になります。
統合失調症とは
統合失調症は脳内のドーパミンの過剰分泌が関係するとされる「脳の病気」です。急性期には幻聴や妄想といった陽性症状が現れますが、改善後には意欲の低下や感情の平板化などの陰性症状が目立つことが多いです。陰性症状は「本来あるべきもの」が失われたり減少したりするものであり、長期間続く傾向があります。抗精神病薬の効果は限定的であるため、症状に対する適切な対応が求められます。
統合失調症の病期
統合失調症の経過は、大きく以下の3つの段階に分けられます。
- 急性期 急性期は、幻聴や妄想などの陽性症状が目立ち、脳が敏感になり興奮することが多い時期です。この時期は陰性症状が存在していても、陽性症状が目立つため認識されにくい傾向があります。
- 休息期 陽性症状が治まり、精神的に落ち着く段階に入ると、意欲低下などの陰性症状が目立つようになります。外部から見ると、活動が減少し、日常生活に支障をきたすことがあります。
- 回復期 時間の経過とともに陰性症状が徐々に改善していきますが、完全に消失するわけではなく、一部残存することが多いです。生活や活動の幅は広がるものの、統合失調症発症前と比べると、依然として困難が残ることがあります。
代表的な陰性症状
陰性症状には以下の3つが代表的です。
- 意欲低下(アパシー)
- 何をするにもやる気が出ない。
- 何かを始めてもすぐに疲れてしまい、集中力が続かない。
- 身だしなみや入浴といったセルフケアが難しくなる。
- 感情の平板化
- 喜怒哀楽の感情が乏しくなる。
- 表情や言葉の抑揚が少なくなる。
- 他者からの刺激に対する反応が鈍くなる。
- 社会的ひきこもり
- 人との関わりを避け、一人で過ごすことを好む。
- 外出の機会が減少する。
- 家族や知人との会話が減少し、言葉数が少なくなる。
陰性症状への対策
陰性症状への対策として、「無理をしない」「徐々に動いていく」という2つの方針が重要です。
無理をしない
無理に活動を増やすと、急性期の再燃リスクが高まるため注意が必要です。特に周囲からの圧力は逆効果になりやすく、焦らずゆっくりと回復を目指すことが大切です。回復には時間がかかるため、休養を基本にしながら少しずつ前進することが望まれます。
徐々に動いていく
本人の意思を尊重し、動きたいと感じたときに少しずつ活動を増やしていくことが重要です。
- 体調に合わせて活動量を調整する。
- 「やるべき」といったプレッシャーをかけない。
- 調子が悪いときはすぐに休養をとり、回復後に再び活動を試みる。
自分でできる活動
陰性症状がある中で自分で取り組める活動として、以下のようなものがあります。
- 散歩などの軽い運動を取り入れる。
- コンビニでの買い物など、短時間の外出をする。
- 家事を少しずつ増やしていく。
サポートを活用する
支援を活用しながら回復を目指すことも有効です。
- 訪問看護
- 看護師が訪問し、相談に乗ったり、散歩の付き添いをしてくれる。
- 作業療法(OT)
- 病院でのリハビリプログラムに参加し、頭や体を使う活動を行う。
- デイケア
- 日中施設に通い、一定時間活動することで生活リズムを整える。
- 作業所の利用
- 軽作業を行いながらリハビリを進める。
家族の関わり方
家族が注意すべき点として、「High-EE(感情表出の高さ)」を避けることが挙げられます。陰性症状は外から見ても変化が少ないため、焦りや苛立ちを感じることもありますが、感情を強くぶつけることは逆効果になりやすいです。
基本的な対応としては、
- 本人が動きたくなるまでじっくり見守る。
- できたことを積極的に褒める。
- アドバイスよりも相談に応じる姿勢を大切にする。
落ち着いた環境を提供することで、本人の回復を支えることができます。
まとめ
統合失調症の療養において、陰性症状への対策は重要です。陽性症状が治まった後に現れる意欲低下や感情の平板化、社会的ひきこもりは、日常生活に大きな影響を及ぼします。対策としては、「無理をせず、徐々に活動を増やしていく」ことが大切です。周囲の人々は焦らず、ゆっくりとした回復を見守る姿勢を持つことが重要です。
陰性症状は長期にわたることが多いため、焦らず、休養を土台としながら、少しずつ生活の幅を広げていくことが求められます。適切な支援を受けながら、本人のペースで回復に向かっていけるような環境を整えていきましょう。