はじめに
今回は、スルピリド(商品名:ドグマーチル)について詳しく見ていきたいと思います。
スルピリドは、近年主にうつ病に対して使用されることが多い薬ですが、統合失調症や胃潰瘍にも適応がある薬剤です。
その作用機序や適応症、副作用、実際の使用方法について詳しく解説していきます。
スルピリドの作用機序

スルピリドは、脳内の神経伝達物質であるドーパミンの働きを調整する薬剤です。
ドーパミンは、意欲や感情のコントロール、認知機能などに関与する神経伝達物質であり、過剰であれば幻覚や妄想といった統合失調症の症状を引き起こし、不足すると意欲低下や抑うつ状態を招きます。
スルピリドの特徴的な点は、投与量によってドーパミン受容体への作用が変わることです。
・ 少量投与(50〜150mg程度)
・ドーパミンの働きを適度に促進し、意欲を向上させる作用を持ちます。
・そのため、うつ病や軽度の抑うつ状態に有効とされます。
・ 中等量投与(150〜600mg程度)
・うつ病や統合失調症の症状を改善するために用いられます。
・ 高用量投与(600〜1200mg程度)
・ドーパミンの働きを抑制する作用が強くなり、幻覚や妄想といった統合失調症の症状を改善する目的で使用されます。
このように、投与量によって作用の仕方が異なるため、適応される疾患も変わってきます。
ドーパミンとスルピリドの関係
ドーパミンは、脳内のドーパミン受容体に結合することで以下のような役割を果たします。
・ ドーパミンが不足すると
意欲の低下、抑うつ症状、無気力感が生じます。
これがうつ病の一因と考えられています。
・ ドーパミンが過剰になると
幻覚や妄想が引き起こされることがあります。
これは統合失調症の症状の一つです。
スルピリドは、少量ではドーパミンの働きを促進し、抑うつ症状を改善し、多量ではドーパミンの過剰な働きを抑えることで幻覚や妄想を抑える作用を持っています。
胃を守る作用について

スルピリドには、胃の粘膜を保護する作用もあることが知られています。
少量のスルピリドは、消化管の働きを活発にすることで、胃を守る作用が期待されます。
そのため、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍に対しても適応があり、1日150mg程度で使用されることがあります。
しかし、現在はH2ブロッカー(ファモチジンなど)やプロトンポンプ阻害薬(PPI:オメプラゾールなど)の方が胃薬としての効果が高いため、スルピリドを単独で胃薬として使用することは少なくなっています。
ただし、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬に伴う胃の不調や吐き気を軽減する目的で、スルピリドが併用されることもあります。
適応症と使用量
スルピリドの適応症と用量は以下のようになっています。
- うつ病・抑うつ状態
・1日150〜300mgを適宜調整
・最大600mgまで使用可能 - 統合失調症
・1日300〜600mgを適宜調整
・最大1200mgまで使用可能 - 胃・十二指腸潰瘍
・1日150mgを適宜調整
特に、現在主に使用されているのはうつ病・抑うつ状態に対する治療です。
主な副作用
スルピリドの副作用の中で、最も注意が必要なのはプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)の上昇です。
・ プロラクチン上昇による副作用
女性:無月経(生理が止まる)、乳汁分泌
男性:性機能低下、乳房の腫れ
また、その他の副作用として、以下の症状が挙げられます。
・ 眠気
・ パーキンソン症状(筋固縮、手の震えなど)
ただし、うつ病に対して少量を使用する場合は、比較的副作用の頻度が低いとされています。
実際の使い方

① 単剤(スルピリド単独)での使用
うつ病の治療において、スルピリドを単剤で使用することがあります。
・ 一般的には50〜100mg(1〜2錠)から開始
・ 副作用(プロラクチン上昇など)が出にくいが、効果もややマイルド
・ 効果が不十分な場合は、他の抗うつ薬への切り替えや併用を検討
② SSRIなどとの併用
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とスルピリドを併用する方法もあります。
・ 併用することで、うつ症状に対する相乗効果を期待
・ SSRIの副作用(吐き気、胃の不調)を軽減する目的でも使用される
・ ただし、併用してもプロラクチン上昇の副作用が出る可能性があるため注意が必要
まとめ
今回はスルピリド(ドグマーチル)について詳しく解説しました。
・ スルピリドは、ドーパミンの働きを調整する薬であり、投与量によって異なる作用を示します。
・ うつ病・うつ状態には少量(50〜150mg程度)を使用し、ドーパミンの働きを促進することで効果を発揮します。
・ 統合失調症には高用量(600mg以上)を使用し、ドーパミンを抑制する作用を利用します。
・ プロラクチン上昇によるホルモンの副作用には注意が必要です。
・ 単剤またはSSRIとの併用で使用されることがあり、それぞれにメリットと注意点があります。
スルピリドは適切に使用すれば、うつ病治療の選択肢として有用な薬剤です。医師の指導のもと、適切な用量で使用することが大切です。