今回は、うつ病や適応障害のセルフケアに役立つ、認知行動療法・認知の再構成についてのお話です。
うつ病や適応障害の方は、自分を責めるという考え方のクセに陥りやすく、その影響で症状が長期化、または悪化しやすい状態にあります。
その場合は考え方のクセを直す認知行動療法を取り入れると、回復の一助になってくれるでしょう。
認知の再構成とは認知行動療法の代表的な療法のことを言います。
まず、認知行動療法では脳の動きを大きく4つに分割して考えます。
考えや、物事の受け取り方に影響する「認知(考え)」・動きにつながる「行動」・身体の状態や感覚に結びつく「体の感覚」・喜怒哀楽などの感情的な動きを司る「感情」、
この4つは互いに影響しながら機能しています。
この4つの中から、意識的に変えやすい認知と行動を動かして、認知行動療法は行われます。
今回ご紹介する認知再構成は、特に考えに直結する認知を意識的に良い方向へ変えていくという方法で進められます。
認知の再構成は2つの段階を踏んで行われます。
まず1つ目の段階は、自分の考えるクセの傾向を把握することです。
例えば、お菓子が入った箱の中に、お菓子が5つ入っているとします。あなたは箱の中のお菓子の個数を見て、どう思いましたか?
物事は見方によって感じ方や気分が変わります。
1つの出来事でも、考え方次第で結果の感情が変化するのです。
また人はそれぞれ、考え方のクセが違います。また、同じ出来事でもその時の状況次第では、感情の結果は様々に移り変わります。
しかし、うつ病や適応障害の場合はどうしても、落ち込みといったうつ症状に自然となって行く傾向にあります。その状態が続くと、考え方のクセも、徐々にマイナス思考寄りとなっていくのです。
では、考えるクセを把握するにはどうすれば良いでしょうか。
その方法は簡単で、自分の感情が動いた出来事に接して、そのときどんな考えが頭に思い浮かんだか。それを繰り返し見ていきます。
繰り返し見た結果、自分の考え方のクセの傾向が少しずつ浮かび上がって行きます。
バランスが取れた考え方が出来ていれば良いのですが、偏ったバランスの考え方になっている場合は修正するのが望ましいです。
服の襟が乱れていたら整える。それと同じように、考え方のクセも見て、整えていくのです。
何度か先述の、感情が動いた出来事で自分の考えはどうなったかを見るという練習を繰り返していくと、大抵の方はそれで改善が出来ます。しかし、中には改善が難しい方もいらっしゃることでしょう。そこで2つ目の段階、別の視点から意識的に見るようにすることです。その方法は3つあります。
まず1つは、「自分の根拠とは逆の根拠を見て、別の考え方を見つける」ということです。
これは起こった出来事に対して、自分の考え方のクセや過去の経験から考え出された根拠とは別に、
異なる視点から見た逆の根拠を考え、自分に対するマイナス感情を軽減する方法です。
2つ目は、「調子が良い時の自分や、他の人ならどうするか、視点を変えて考える」です。
例えば自分が抱えている問題で悩んでいるときに、時には他人に悩みを相談することがあるかと思います。その時、相手から出た相談の答えを聞いて、新たな発見に気が付いたことはありませんか?
この方法はそれと同じで、いつもの自分や他人から、考え方を知るという方法になります。
3つ目は「一歩引いて考える」です。
俯瞰的に、全体を見て物事を考えます。そうすることで、別の考え方を得ることもできます。
以上3つの方法を実践するには、2つの重要なポイントがあります。
1つは、具体的に、完全にやろうと思わないことです。
先述の方法は忠実にやると、慣れないうちは疲れてしまいます。疲れた結果、継続するのをやめる結論に至る可能性もあります。
もう1つは、繰り返し方法を実践していくことです。自然と自分の脳で、自分の考え方のクセとは違う、別の視点を持った考え方ができるようになるまで、少し力を抜いて続けていくことが大事です。
しかし、この認知の再構成は、行うことに限界がある状態も存在します。
1つは、うつ病の急性期であること。急性期の症状は、自分自身を否定するうつ症状が強く出ている状態にあります。このような時は治療に専念してください。
もう1つは、自閉症スペクトラム障害のこだわりがある場合です。
自閉症スペクトラム障害は幼少期から1つの視点にこだわりを持っていることがあるので、なかなか視野の変更が難しい状態にあります。
症状の強さによって、繰り返し練習して少しずつ違う考え方を身につけていくか、必要なサポートを受けるかを検討すると良いです。
最後にもう1つ、深く考えるクセがある時は、まずは小さな成功体験を重ねていきましょう。
少しずつ、考え方を変えていくと、視界が開けて見えてくると思います。
認知の再構成は、意識的に別の考えに視野を向けることで、自分自身の考え方を見つめ直すものです。
考え方のコツをつかめば、考え方のクセも変えていくことが出来ます。
ゆっくりと、経験を重ねていくことで、考えと行動は変えていけること、そして自身の回復にもつながっていくのです。