敗血症性ショック

「敗血症性ショック」は、重篤な感染症が引き金となる命に関わる状態です。
本記事では、まず敗血症とは何かを振り返り、その後にショックの概念敗血症性ショックの観察ポイント診断や治療について詳しく解説していきます
この記事を最後まで読めば、敗血症と敗血症性ショックに関する知識がしっかりと身につくはずです。
ぜひ、最後までご覧ください。

1.敗血症とは?

敗血症性ショックを理解するためには、まず敗血症についての基礎を知る必要があります。
日本版敗血症診療ガイドライン2020では、敗血症を以下のように定義しています。
「感染に対する調節不能な宿主反応によって、重篤な臓器障害が引き起こされた状態」

    この臓器障害の評価には、SOFASequential Organ Failure Assessment)スコアが用いられます。
    SOFAスコアは、主に集中治療室(ICU)で使用される指標で、感染が疑われる患者でSOFAスコアが2点以上上昇した場合に敗血症と診断されます。

    1-1. ICU以外での敗血症スクリーニング
    ICU以外の一般病棟では、qSOFAスコア(quick SOFA)が使われます。
    qSOFAスコアは以下の3つの項目を評価します。

    ・呼吸回数(22回/分以上)
    ・意識レベルの低下
    ・収縮期血圧(100mmHg以下)
    感染症が疑われる状況でこの3項目のうち2項目以上を満たすと、敗血症の可能性が高く、集中治療が必要になる可能性があります。

    1-2. 敗血症の治療の基本
    敗血症の治療では、まず原因となる感染症のコントロールが最優先です。
    そのため、適切な抗生剤治療が迅速に開始されます。
    また、臓器障害の進行を抑え、適切な循環管理を行うことも重要なポイントです。

    2.敗血症性ショックとは?

    敗血症が進行すると、循環障害や細胞レベルでの代謝異常が加わり、致死率が大幅に上昇する状態が「敗血症性ショック」となります。

      2-1. 敗血症性ショックの定義
      敗血症性ショックは、敗血症の状態に加えて
      ・輸液を大量に投与しても血圧が改善しない(低血圧が持続する)
      ・血中乳酸値が上昇している
      この上記2つを満たす場合に診断されます。

      「低血圧=ショック」と考えがちですが、これは誤解です。
      ショックとは、組織への血流が不足し、酸素供給が低下する状態を指します。
      血圧が90mmHg以下であっても、必ずしもショック状態であるとは限らないのです。

      3.ショックのメカニズム

      敗血症性ショックの理解には、次の2つの重要なポイントを押さえる必要があります。

        ・組織への酸素供給の低下
        ・血中乳酸値の上昇

        3-1. 組織への酸素供給の低下
        敗血症では、感染症により全身に炎症反応が引き起こされます。
        この際、ヒスタミン一酸化窒素炎症性サイトカインといった物質が放出され、血管が拡張します。

        血管が拡張することで、炎症部位の血流が増加し、発赤や熱感が生じます。
        しかし、血管の拡張により、血管内皮細胞の隙間が広がり、血管内の水分が血管外へ漏れ出てしまいます(血管透過性の亢進)
        その結果、血管内の血液量が減少し、血圧の低下と組織への酸素供給不足が生じます。

        3-2. 血中乳酸値の上昇
        血中乳酸値は、ショック状態において非常に重要な指標です。
        通常、人はATP(エネルギーの源)を酸素を用いて効率的に産生します。
        しかし、ショックによって細胞への酸素供給が不足すると、酸素を使わない「嫌気性代謝」によるATP産生が行われます。
        この時、代謝産物として乳酸が生成されるため、血中乳酸値の上昇は組織の酸欠状態を示唆する重要なサインとなります。

        ただし、乳酸値は必ずしもショックのみで上昇するわけではないため、医師による慎重な判断が求められます。

        4.敗血症性ショックの観察ポイント

        敗血症性ショックを早期に発見するためには、患者の全身状態の評価が非常に重要です。
        ここでは、特に注目すべきポイントを紹介します。

          4-1. 意識レベルの変化
          脳は酸素不足に非常に敏感なため、意識の低下や不穏な状態が現れることがあります。
          特に、普段の様子と比べて変化がある場合は、注意が必要です。

          4-2. 尿量の変化
          腎臓は血流の変化に敏感であり、敗血症性ショックでは尿量の低下(乏尿・無尿)が認められます。
          一般的に、1時間あたり体重1kgあたり0.5mL以上の尿が出ていない場合、腎機能の低下が疑われます。

          4-3. 皮膚の変化
          敗血症の患者では、膝や前胸部に紫色の網目状の皮膚(網状チアノーゼ)が見られることがあります。
          この所見は、敗血症性ショックの予後の指標としても重要視されています。

          まとめ

          最後に、敗血症性ショックについてポイントを整理しましょう。

            ✅ 敗血症とは、感染症によって臓器障害を引き起こす状態であり、SOFAスコアやqSOFAスコアを用いて評価する。
            ✅ 敗血症性ショックは、輸液に反応しない低血圧と乳酸値の上昇を特徴とする、致死率の高い病態である。
            ✅ ショック=低血圧ではなく、組織の酸素供給が低下している状態を指す。
            ✅ 敗血症の評価には、採血データだけでなく、意識レベル・尿量・皮膚の変化など、ベッドサイドでの観察が重要である。

            敗血症性ショックは、ICUに限らず一般病棟でも遭遇する可能性があります。
            適切な知識を持ち、早期発見・適切な対応を行うことが、患者の救命につながります。