生活に生かす精神医学 ~ 徐々に慣らす方法について ~
今回は「生活に生かす精神医学」のテーマとして、「徐々に慣らす」という方法についてご紹介したいと思います。この方法は、特に不安や苦手なことに対して非常に有効なアプローチです。不安や恐怖に直面すると、私たちは自然にそれを避けることが多いですが、避け続けることで可能性を狭めてしまうことがあります。そこで重要になるのが、少しずつ慣れていくことで不安を乗り越えていく方法です。それでは、具体的にどのように実践していくのかを見ていきましょう。
1. 苦手だからやらない? それとも徐々に慣らす?
私たちの生活の中で、苦手なことや不安なことに直面する場面は少なくありません。特に「やりたいけれど苦手」「やりたいけれど不安」という場合、どうしてもその行動を避けたくなることがあります。しかし、避け続けていると、だんだん自分の可能性が狭まっていきます。例えば、電車に乗るのが怖いという人が、ずっとその恐怖を避けていると、最終的には外出自体が難しくなってしまうこともあります。
そんな時に重要なのが、「徐々に慣らす」というアプローチです。この方法では、急に強い負荷をかけることはなく、少しずつ不安に慣れていくことで、最終的にはそれに対する恐怖心を軽減させることができます。具体的には、最初は非常に軽い負荷から始め、慣れてきたら少しずつ負荷を増やしていくという方法です。
2. 背景の理論「系統的脱感作法」
「徐々に慣らす」という方法の背景には、「系統的脱感作法」という心理療法の理論があります。この方法はもともと、パニック障害の治療法として開発されました。系統的脱感作法は、以下のようなプロセスで行われます:
- 初めは軽めの負荷からスタート
- 少しずつ負荷を増やしていく
- 不安が生じた場合には、少し休んでから再開する
例えば、電車に乗るのが怖いという人に対して、最初はわずか2分間の電車乗車から始め、その後4分、8分と少しずつ慣れていくことで、不安感を軽減させていきます。これは、パニック障害に限らず、対人不安や社会不安障害など、さまざまな不安症状に対しても効果的です。
また、この方法は強迫性障害(確認行動を繰り返すなど)にも応用されることがあります。要するに、幅広い不安に対して有効なアプローチとして、系統的脱感作法は非常に重要な理論の一つです。
3. 脱感作法のポイント
系統的脱感作法に基づく「徐々に慣らす」方法を実践するためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。以下にその3つのポイントを挙げてみましょう。
① 徐々に行う
最も大切なポイントは、「一気に強い負荷をかけないこと」です。例えば、パニック障害を持つ人が急に混雑した電車に乗ると、発作を引き起こす可能性が高くなります。いきなり強い不安を感じる状況に身を置くことは、逆に不安を強める結果になることが多いのです。
これと似たような現象は、体のトレーニングにも見られます。いきなり重いバーベルを持とうとしても、体がついていかず、怪我をしてしまいます。最初は軽い負荷でトレーニングを始め、体が慣れてきたら徐々に重さを増やすことで、安全にトレーニングを続けられるようになるのです。精神的な不安も同じように、少しずつ慣らしていくことで、無理なく不安を軽減することができます。
② 休養とセットで
「徐々に慣らす」とは言っても、それだけで負担がかかります。慣れる過程では、どうしても精神的な疲れが溜まることがあります。そのため、慣らす過程と休養をセットで行うことが重要です。無理に慣らし続けてしまうと、逆に精神的な負担が増え、効果が薄れてしまうことがあります。
また、不調時に無理に慣らしを行おうとするのは逆効果です。調子が良い時に少しずつ慣らすことで、より効果的に不安を和らげることができます。コンディションが整っている時に、少しずつ慣らすことを心がけましょう。
③ 動機づけ
不安を乗り越えるためには、慣らす過程に対してしっかりとした動機づけが必要です。すべての苦手なことに対して無理にこの方法を使うのは現実的ではありませんが、自分が「どうしてもやりたい」と思っていることに対しては、徐々に慣らすことが非常に効果的です。
例えば、仕事でプレゼンテーションをするのが不安だと感じている場合、その「プレゼンを成功させたい」という強い動機があれば、少しずつ慣らしていくことができます。このように、慣らす過程において自分の動機をしっかりと持つことが、成功への鍵となります。
4. まとめ
「徐々に慣らす」という方法は、不安や苦手なことに対して非常に効果的なアプローチです。不安や苦手なことを全て避けることはできませんが、少しずつ慣らしていくことで、どんな困難にも立ち向かう力を身につけることができます。
今回のポイントを簡単にまとめると、以下の通りです。
- 不安や苦手を全て避けることはできない → 少しずつ慣らすことで克服する
- 「系統的脱感作法」の理論を基に、徐々に負荷をかける → 初めは軽めから始めて、慣れてきたら負荷を増やす
- 慣らす過程には休養が重要 → 無理せず、調子が良い時に慣らす
- しっかりとした動機づけを持つ → 「やりたい」という気持ちを持つことが成功に繋がる
生活の中で「やりたいけれど不安がある」と感じることがあれば、ぜひ今回の方法を参考にして、少しずつ慣らしていくことを試してみてください。