今回は、血液ガス分析についてお話ししたいと思います。まず、呼吸器系の血液ガス分析とは何かを簡単に説明しますと、主に動脈から血液を採取し、その後に患者さんの呼吸状態を詳細に評価する方法です。今回は呼吸状態の評価に必要な指標を詳しく解説していきます。
血液ガス分析を行うことで、患者さんの呼吸機能の状態を把握することができます。呼吸機能とは、単に息を吸ったり吐いたりするだけでなく、酸素を効率よく血液中に取り込む能力を意味します。人間がどのように酸素を体内に取り込んでいるのかを簡単に説明しますと、まず呼吸によって酸素を取り込み、その酸素は肺の毛細血管を通じて血液中に溶け込みます。この酸素が血液によって全身へ運ばれます。このため、動脈血中に酸素がどれだけ溶けているかを調べることが、呼吸状態を評価する上で重要になります。
動脈血中に溶けている酸素の量は、通常「PaO2(酸素分圧)」という指標で示され、単位はmmHg(ミリメートル水銀柱)で表されます。健康な成人の場合、PaO2の正常値は100mmHg程度とされています。この値が低下すると、酸素の取り込みがうまくできていない可能性があることが分かります。PaO2が60mmHg以下になると、呼吸不全に近い危険な状態であると定義されます。
次に、酸素が血液中でどのように使われるかですが、酸素は血液中のヘモグロビンと結びつき、体の各組織に届けられます。このため、血液中に溶けている酸素量だけでなく、ヘモグロビンと酸素がどれだけ効率よく結びついているかを知ることも非常に重要です。ここで注目すべき指標は「SaO2(酸素飽和度)」です。SaO2は血液中のヘモグロビンがどれだけ酸素と結びついているかの割合を示し、通常は95%以上が正常範囲とされています。SaO2が90%以下になると、呼吸不全の可能性が高くなります。
PaO2やSaO2は、動脈血を直接採取することで測定できますが、動脈血を採取するには患者さんに針を刺して血液を採取しなければならないため、患者さんにとって負担が大きくなります。そのため、簡便に酸素状態を確認するために、日常的に使用されるのが「パルスオキシメーター」です。パルスオキシメーターは指にクリップを装着するだけで、酸素飽和度を非侵襲的に測定できる装置です。こちらもSaO2を測定するもので、正常値は95%以上、90%以下は呼吸不全と判断されます。
しかし、パルスオキシメーターは、マニキュアを塗っていたり、指先の血行が悪かったりする場合、正確な測定ができないことがあります。そのため、使用時には注意が必要です。
次に、呼吸機能において息を「吸う」ことだけでなく、息を「吐く」ことも重要であることを理解しておく必要があります。ここで重要な指標が「PaCO2(二酸化炭素分圧)」です。PaCO2は血液中に溶けている二酸化炭素の量を示し、正常値は35~45mmHgです。二酸化炭素はエネルギー産生の過程で発生し、体内に溜まると酸性になります。体が酸性に傾きすぎると、さまざまな体調不良を引き起こす可能性があります。逆に、二酸化炭素が過剰に排出されることも問題であり、体内の酸性度が適切に保たれているかを監視する必要があります。
PaCO2が60mmHgを超えると、呼吸不全の状態とされ、急速な対応が求められます。逆に、PaCO2があまりに低くなりすぎると、過呼吸やその他の問題を引き起こすこともあります。このように、呼吸状態を評価するためには、酸素と二酸化炭素の両方のバランスが重要です。
これまで説明したように、血液ガス分析ではPaO2(酸素分圧)、SaO2(酸素飽和度)、PaCO2(二酸化炭素分圧)などを基に呼吸状態を評価します。これらの値を適切に確認することで、患者さんの呼吸機能をより正確に理解することができます。
PaO2の正常値は80~100mmHg、PaCO2の正常値は35~45mmHg、SaO2の正常値は95%以上です。PaO2が60mmHg以下、SaO2が90%以下、またはPaCO2が60mmHg以上になると、いずれも呼吸不全を示唆する危険な値となります。
今回は血液ガス分析を用いて呼吸状態を評価する指標について詳しく説明しました。これらの指標を理解し、実際の臨床でどう活用するかをしっかり把握することが、患者さんの適切な治療に繋がります。