
膵頭十二指腸切除術(PD)の術式と看護について
膵頭十二指腸切除術(PD)は、主に膵頭部に発生した腫瘍に対して行われる外科的手術です。膵頭部にできたがん細胞を切除し、治療することを目的としています。ただし、術式名にも含まれるように、膵頭部だけでなく十二指腸も同時に切除されることが特徴です。
膵頭部周辺には重要な太い血管や胆管などの臓器が多く存在し、膵頭部自体も解剖学的に複雑な位置にあるため、膵頭部だけを切除するのは非常に困難です。そのため、胃を半分ほど切除し、胆嚢および十二指腸も含めて摘出し、消化管機能を維持する形で臓器を再建する手術がPDです。この手術は膵頭部腫瘍だけでなく、胆管がん、胆嚢がん、あるいはファーター乳頭がんなどの治療にも適用されます。
手術術式の進化
PDの手術方法は近年進化を遂げており、患者の負担を軽減するための術式が選択されることがあります。
- 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)
- 幽門輪を温存することで、胃の機能をより多く残します。
- 亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPPD)
- 胃の幽門部は切除しますが、全体的に胃を温存することで、術後の生活の質(QOL)を向上させます。
これらの術式の選択は、患者の腫瘍の性質や広がりに応じて行われます。また、切除後の再建方法も多様であり、手術中に適切な方法が選択されます。
PDの手術手順
- 腹部切開 上中腹部正中切開によって、みぞおちからへその下まで切開し、手術を開始します。
- 臓器の切除準備 十二指腸や膵頭部は腹腔内の膜に覆われており、周囲の臓器と接しています。そのため、これらの臓器を慎重に剥離していきます。
- 臓器切除
- 胆嚢を肝臓から剥離し、胆管を切除。
- 血管の処理を行いながら、胃の一部、膵頭部、十二指腸を順に切除します。
- 臓器再建 切除した空腸に対して、以下の順序で再建を行います。
- 膵臓
- 胆管
- 胃
- 術後処置 腹腔内を洗浄し、出血や縫合不全がないか確認した後、ドレーンを挿入します。このドレーンは術後の観察に非常に重要で、膵液漏や縫合不全の早期発見に役立ちます。
術後看護のポイント
PD後の患者管理では、以下のポイントに特に注意を払う必要があります。
1. 膵液漏の観察
膵液漏はPDの主要な合併症の一つです。膵液にはアミラーゼやトリプシンといった強力な消化酵素が含まれており、これが腹腔内に漏れると、周囲の血管や組織を分解し、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
- ドレーン排液の観察 膵液漏が起きると、ドレーン排液が無色透明からワインレッド色に変化します。血性排液とは異なり、透き通った赤みが特徴です。
- 排液検査 アミラーゼ値の上昇が確認されると、膵液漏の可能性が高まります。必要に応じてドレーンの位置調整や再挿入を行い、悪化を防ぎます。
2. 腹腔内出血の予防と発見
膵液漏が続くと動脈瘤の形成を引き起こし、最終的には動脈破裂による大量出血のリスクがあります。このため、術後10日から20日頃までの観察が特に重要です。
3. その他の合併症への対策
膵液漏以外にも、以下の合併症に注意が必要です。
- 腹膜炎
- 消化管潰瘍
- 術後出血
- 胆汁漏
- 創部感染
- 胆管炎
これらのリスクに対応するため、バイタルサインや血液データの変化、腹部症状の異常を綿密にモニタリングします。
4. 患者の安楽の確保
術後は痛みが強く、睡眠障害を訴える患者も少なくありません。患者の声に耳を傾け、以下の対応を行います。
- 鎮痛剤の適切な使用
- 環境調整
- メンタルケア
まとめ
- 膵頭十二指腸切除術は、膵頭部腫瘍を含む複数の疾患に適用される大規模な手術です。
- 膵液漏は、特に注意が必要な合併症であり、早期発見と対応が不可欠です。
- 術後観察では、ドレーン排液や全身状態のモニタリングが重要な役割を果たします。
- 患者の痛みや不安に寄り添う看護が、術後回復を支える鍵となります。
適切な看護と管理により、PDを受けた患者が安全かつ快適に回復できるよう支援することが求められます。