脳室ドレーンと脳槽ドレーンの管理と看護
はじめに
寒い季節になると救急搬送が増加する疾患の一つとして、脳卒中が挙げられます。その中でもくも膜下出血は特に注意が必要な疾患です。発症した患者のうち約3割は社会復帰が可能である一方、残りの約7割は何らかの後遺症を抱えるか、最悪の場合には死亡するケースもあります。くも膜下出血は重症度が高く、特に再出血が患者の予後を大きく左右する要因となります。
再出血が発生すると、頭蓋内に大量の血液が溜まり、頭蓋内圧の亢進や脳ヘルニアを引き起こすリスクが高まります。これにより、患者の生命が危険にさらされるため、早期発見が非常に重要です。再出血の臨床症状としては、頭痛、嘔吐、意識障害、麻痺、瞳孔の左右差などの神経学的異常が挙げられます。特に瞳孔の左右差は動眼神経の圧迫を示し、脳ヘルニアや脳出血の進行を強く疑う所見です。そのため、看護師は日常的にこれらの異常に注意を払い観察を行う必要があります。
術後の鎮静管理が行われている患者の場合、鎮静薬の影響で神経学的所見の観察が難しいこともあります。そのため、術後の全身管理や観察において、脳室ドレーンや脳槽ドレーンが重要な役割を果たします。
脳室ドレーンの役割と管理
脳室ドレーンは、脳室内の脳脊髄液や血液を排出するために用いられるチューブです。脳室内に挿入され、頭蓋内圧のコントロールを目的としています。くも膜下出血では、脳脊髄液の循環が乱れることがあります。通常、脳脊髄液は産生と吸収を繰り返して循環していますが、出血による血液成分がくも膜下腔で目詰まりを起こすと吸収が妨げられ、水頭症を引き起こします。水頭症が進行すると、頭蓋内圧が上昇し、最終的には脳ヘルニアなどの危険な状態に至る可能性があります。
急性期においては、脳室ドレーンを用いて脳脊髄液の排出と圧の管理を行います。これにより、水頭症や頭蓋内圧の上昇を防ぐことが可能です。
脳槽ドレーンの役割と管理
脳槽ドレーンは、くも膜下腔内に溜まった血液や過剰な脳脊髄液を排出するためのチューブです。くも膜下出血が起きると、血液がくも膜下腔内に溜まり、水脳症や脳ヘルニアのリスクを高めます。また、血液成分が脳血管攣縮を引き起こす可能性もあります。脳槽ドレーンは、これらのリスクを軽減するために留置されます。
術後、ドレーンの排液は通常血性ですが、徐々に透明に変化していきます。しかし、再出血が起きた場合には、排液が再び血性に変化するため、これを早期に発見し医師に報告することが看護師の重要な役割となります。
ドレーン管理の注意点
脳室ドレーンや脳槽ドレーンの管理において、以下の点に注意する必要があります。
- ドレーンの高さ調整 開放式ドレーンが使用される場合、外耳孔と同じ高さを基準点(ゼロ点)として調整します。この高さ調整により、ドレーンの圧をコントロールします。例えば、ゼロ点から20cmH₂Oの高さに設定した場合、20cmH₂Oの圧力がかかっていることを意味します。
- 排液量の観察 水脳症や脳圧亢進が疑われる場合、排液量の増加や減少に注意が必要です。通常、脳脊髄液は1日あたり約500ml産生され、1時間あたり約20mlが基準となります。これを超える排液量がある場合、医師の指示でドレーンのクランプや設定圧の調整を行う必要があります。
- 液面の動きの確認 ドレーンの液面の動き(液面波動)を確認することで、ドレーンが詰まっていないかを判断します。波動が見られない場合、ドレーンの閉塞が疑われるため、速やかに医師に報告することが重要です。
- 排液の性状変化 排液が血性から透明に変化する過程を観察しますが、再出血が起きた場合には、排液が再び血性に変化します。この変化を見逃さず、適切に報告することが求められます。
まとめ
くも膜下出血では、脳室ドレーンや脳槽ドレーンを用いることで頭蓋内圧の管理や排液の管理が行われます。排液の性状や量、ドレーンの液面波動を日常的に観察し、異常があれば速やかに医師に報告することが重要です。
排液量の管理では、1時間あたり20mlを目安にし、過剰な排液が低水圧症候群を引き起こさないよう注意が必要です。また、ドレーンの閉塞を予防するため、液面波動が適切にあるかを確認することも大切です。
今回説明した内容を実践し、適切なドレーン管理を通じて患者の安全と治療効果を最大化する看護を提供していきましょう。