直逹牽引の看護 腓骨神経麻痺の予防や激痛を伴う骨折をどう乗り越える?

直達牽引の看護について

今回は、直達牽引の看護について説明していきます。

骨折した部分をそのまま放置すると、筋肉の収縮力によって折れた骨が引っ張られ、正しい位置を保つことが難しくなります。この結果、骨がずれたまま固定されてしまうことがあります。そのため、通常は「整復」という処置が医師によって行われます。この整復では、骨折によってずれた骨を正しい位置へ戻します。

特に足の骨折では筋肉の収縮力が強く、大腿骨頸部骨折や骨幹部骨折では手技による整復が物理的に困難な場合があります。こうした場合には、牽引装置を用いて骨折した部分を正しい位置に整復する方法が採用されます。

牽引には「介達牽引」と「直達牽引」がありますが、今回は直達牽引について解説します。


直達牽引の概要

直達牽引では、骨をしっかりと引っ張るため、キルシュナー鋼線と呼ばれるステンレス製のピンを直接骨に通します。その後、馬蹄や滑車、必要に応じてリネンや毛布などの保護材を使用し、牽引部分が直接圧迫されないようにします。そして、医師の指示に従って10~15キロ程度の重りを吊り下げ、牽引を行うことで骨折部の整復を実施します。

この牽引は、整復だけでなく、良肢位の維持、痛みの緩和、患部の安定化にもつながります。基本的には牽引のみで骨が癒合するのを待つのではなく、必要に応じて手術が行われる場合もあります。しかし、患者さんの基礎疾患や全身状態、骨折に至る背景によっては、手術を待機せざるを得ないケースもあります。そのような場合に直達牽引がよく用いられます。


看護のポイント

ここからは、直達牽引中の看護のポイントについて説明します。

1. 感染兆候の有無の確認

直達牽引では清潔が重要です。キルシュナー鋼線が骨に通ることで、通常清潔であるべき部分に外部から接触が生じるため、侵入部が清潔に保たれていなければ感染症を引き起こすリスクがあります。感染が進行すると全身状態が悪化し、手術の実施が遅れる可能性があります。そのため、侵入部の定期的な消毒を行い、発赤、腫れ、熱感、滲出液の有無などの感染兆候を注意深く観察することが必要です。

2. 正しい牽引の実施状況の確認

牽引が正しく行われているかどうかも重要です。牽引している足と重りが一直線になっていること、良肢位が保たれていることを確認します。特に、体位変換後はポジショニングがずれたり、重りが床に接触していたりすることがあります。また、馬蹄の角度が下がり、足に直接接触していると皮膚トラブルを引き起こす可能性もあります。そのため、正確な牽引が行われているか定期的に確認し、適切なポジショニングを維持することが重要です。

3. 腓骨神経麻痺の予防

腓骨神経は膝の外側で骨を巻くように走行しており、下腿の外側や足背の感覚、足背の背屈運動を支配しています。牽引中、長時間同じ体位でいると腓骨神経が圧迫され、感覚異常や運動障害が出現することがあります。これを防ぐためにも、ポジショニングに十分注意を払い、必要に応じて調整を行います。万一麻痺症状が見られた場合は、速やかに医師へ報告し診察を受ける必要があります。

4. 疼痛コントロール

骨折そのものが痛みを伴うため、牽引中であっても患者さんにとって痛みは大きな問題です。疼痛が強いと、患者さんが治療に対して消極的になることもあります。NRS(Numerical Rating Scale)やCPOTといった疼痛評価スケールを用いて痛みの程度を把握し、必要に応じて薬物療法を行います。また、患部をクーリングすることで、安静や炎症の軽減にも効果があるため、適宜実施することが推奨されます。


まとめ

直達牽引は、骨折部の整復や患部の安定化に重要な役割を果たします。その一方で、感染、神経麻痺、疼痛管理など、多くの看護上の注意点があります。患者さんの全身状態を観察しながら適切にケアを行い、安全で効果的な治療を支えることが看護師としての役割です。