スポーツなどで起こる脳震盪を放置してはいけません 症状や病態を理解した適切な対応が重要です

脳震盪の病態と対応について


今回は、脳震盪の病態と対応について解説します。医療関係者でなくても、「脳震盪」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。

脳震盪とは


脳震盪とは、頭部への衝撃や揺れによって脳に歪みが生じ、記憶喪失や動作異常といった症状を引き起こす状態を指します。特にサッカーやラグビーなど、激しい接触を伴うスポーツで発生することが多く、若く健康な成人でも起こり得ます。そのため、脳震盪は決して珍しいものではありません。スポーツ以外では、交通事故などで救急搬送された患者さんにも見られるケースがあります。
脳震盪は、頭部に強い衝撃が加わることで、脳が頭蓋骨内で急激に揺れることで発生する「外傷性脳損傷」です。見た目に外傷がなくても、急激な揺れが脳細胞にダメージを与え、脳内の生理学的変化を引き起こします。この損傷は、頭をぶつけた部分のみに限らず、衝撃で脳が反対側にぶつかる「対側損傷」も引き起こし、広範囲にわたる脳細胞のダメージにつながります。

脳震盪の症状


脳震盪が起きると、次のような特徴的な症状が現れることがあります。
• 衝撃を受けた前後の記憶が思い出せない
• ぼんやりした様子やぎこちない動作
• 頭痛、脳の圧迫感、吐き気、集中力の低下
救急外来では、脳震盪の患者の多くが同様の症状を訴えますが、これらが見られない場合でも脳震盪を否定することはできません。頭部に強い衝撃を受けた可能性がある場合は、脳震盪の発生を想定して注意深く観察する必要があります。
意識を失うケースは約1割未満であるため、症状が軽度の場合、適切な休息を取らず活動を続けてしまうこともあります。しかし、繰り返し頭部に強い衝撃を受けると、「セカンドインパクト症候群」と呼ばれる致命的な状態を引き起こす危険があります。この症候群は、脳震盪発症後の数週間内に再び頭部外傷を受けた際に発生し、重篤な脳障害や最悪の場合命の危険を伴います。
さらに、急性硬膜外血腫や急性硬膜下血腫といった頭蓋内出血を引き起こす場合もあり、脳震盪が非常に深刻な状況につながる可能性があることを認識しておく必要があります。

対応方法


脳震盪が疑われる患者が救急外来に来た場合、まず全身状態を評価し、安静を確保することが重要です。多くの場合、安静にしていれば自然回復しますが、激しい衝撃を受けた場合には、1週間程度の頭痛や集中力低下が続くこともあります。医療従事者は、患者とその家族に安全な過ごし方を説明し、心拍数が上がるような運動を避けるよう指導します。
また、自宅での経過観察中に以下の症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。
• 麻痺や頭痛の悪化
• 言語障害
• 嘔吐
これらの症状は頭蓋内出血など命に関わる状態の可能性を示します。そのため、経過観察で帰宅となる際には、患者に「少なくとも当日1日は一人で過ごさず、家族や友人と一緒にいること」を勧め、異常が見られた際にはすぐに医療機関に相談するよう指導することが重要です。

まとめ


今回は、脳震盪の病態と対応について解説しました。頭部に強い衝撃を受けた際には、症状の有無にかかわらず脳震盪の可能性を考慮し、適切な対応を行うことが必要です。また、脳震盪を軽視せず、その後の経過観察を徹底することが、重篤な合併症を防ぐ鍵となります。