インペラ使用中の注意点と看護
集中治療の現場で注目される補助循環装置の一つとして、「インペラ」があります。PCPSやIABPに続き、インペラを用いた治療は心不全患者にとっての重要な救命手段となっています。本記事では、インペラの基本的な仕組みや適応、注意点、看護師が担うべき役割について解説します。
インペラとは
インペラは、心臓の左心室に留置する超小型ポンプを内蔵したカテーテル型の補助循環装置です。経皮的に大腿動脈などから挿入されるため、開胸手術を必要とせず、侵襲が比較的小さいことが特長です。装置には小型の羽根車が搭載されており、この羽根車が高速回転することで左心室内の血液を吸入し、上行大動脈へ送り出す仕組みです。
インペラにはいくつかの種類があります。
・IMPELLA 2.5
・IMPELLA CP
・IMPELLA 5.0
種類によって補助できる循環量が異なり、患者の状態に応じて選択されます。IMPELLA 2.5やCPは経皮的挿入が可能ですが、IMPELLA 5.0は外科的な小切開を必要とします。医療者は、装置の特性と患者の病態を考慮し、適切な選択を行います。
インペラの使用目的
インペラは、薬物治療が困難な急性心不全や、他の補助装置(IABPやPCPS)で十分な補助が得られないケースにおいて使用されます。具体的な目的は以下の通りです。
・平均血圧の上昇:全身の臓器へ十分な酸素供給を維持する。
・心負荷の軽減:左心室内の血液量を減らし、心筋の過労を防ぐ。
・心機能の改善:心筋の回復を促進する。
ただし、大動脈弁閉鎖不全症や人工弁置換術後の患者など、特定の病態では禁忌とされています。
インペラ使用中の注意点
インペラは効果的な補助循環装置である一方、使用に伴うリスクや注意点も存在します。以下では、特に看護師が注意すべきポイントを詳しく説明します。
1. 溶血の管理
インペラの羽根車が血液に物理的な力を加えることで、赤血球が破壊され、溶血が発生する可能性があります。溶血が進行すると遊離ヘモグロビンが増加し、腎障害を引き起こすことがあります。このため、以下の観察が重要です。
尿の状態確認
溶血によって「赤色尿(ヘモグロビン尿)」が見られる場合があります。日常的に尿量や色調の観察を行い、異常があれば速やかに医師へ報告します。
血液検査
血中の遊離ヘモグロビン濃度や腎機能(クレアチニン値など)を定期的に確認することで溶血の進行を監視します。
ポンプ回転数の調整
インペラの補助流量はポンプの回転数(P0~P9)で調整されますが、過剰な回転数設定は溶血のリスクを高めます。医師と協力しながら適切な設定を維持することが重要です。
2. カテーテルの位置確認
インペラは経皮的に挿入されるため、位置がずれるリスクがあります。位置のずれは脱血不良や急激な血圧低下を引き起こすため、細心の注意が必要です。
位置波形とモーター波形の確認
インペラの制御装置では、位置波形(左心室と動脈の圧波形)とモーター波形(吸入と吐出の圧差波形)を確認できます。正しい位置にある場合、これらの波形は正常な形状を示します。位置がずれた場合、以下のような変化が見られます。
・深く挿入された場合:位置波形は心室波形を示し、モーター波形はフラットになります。
・浅く抜けた場合:位置波形は動脈圧波形を示し、モーター波形はフラットになります。
物理的な固定の確認
挿入部周囲の固定がしっかり行われているか、定期的に観察します。患者の動きや体位変換時にズレが生じないよう配慮します。
3. 合併症の早期発見
インペラ使用中は溶血や感染、血栓形成といった合併症のリスクが高いため、以下を観察します。
感染症の兆候
挿入部の発赤、腫脹、発熱などの症状をチェックします。特に大腿動脈周囲の挿入部は感染リスクが高いため、清潔管理が欠かせません。
血栓形成の防止
抗凝固療法が行われている場合は、血液凝固検査を定期的に確認し、適切な範囲内で管理します。
看護師の役割
インペラ使用中の看護師は、患者の全身状態を総合的に観察し、医師と密接に連携することが求められます。具体的には以下の役割を担います。
1. バイタルサインの管理
平均血圧や心拍数の変化を細かく記録し、インペラの効果が適切に発揮されているか確認します。
2. 患者教育
装置の仕組みや制限事項を患者や家族に説明し、協力を得ることで治療を円滑に進めます。
3. 緊急対応の準備
急な状態悪化に備え、医療スタッフ全体で緊急対応の体制を整えます。
まとめ
インペラは心不全治療において画期的な補助循環装置ですが、適切な管理が求められます。特に看護師は、溶血や位置ずれ、合併症の早期発見を担う重要な役割を果たします。日々の観察や知識の習得を通じて、患者の安全を守るための努力を続けていきましょう。
このように、インペラの使用は医療チーム全体の連携が不可欠です。今後もこの分野の発展とともに、看護師としてのスキルを高めていく必要があります。