自閉スペクトラム症とはどのような障害か
自閉スペクトラム症(ASD)は、他者との社会的なつながりや興味の範囲が狭く、周囲との関係を築くことが難しい障害です。幼少期から、視線を合わせることが少ない、共感力が低い、コミュニケーション手段が限られているといった特徴が見られます。また、「心の理論」と呼ばれる、相手の感情や考えを推測し理解する能力にも課題があります。さらに、同じ行動の繰り返しや、極端な好き嫌い、感覚の過敏さといった特徴が見られることがあり、日常生活での配慮が求められます。ASDは以前「広汎性発達障害(PDD)」と呼ばれていましたが、2013年に診断基準が改訂され、DSM-5では「スペクトラム(連続体)」という言葉が加えられました。これは、ASDの症状が多様であり、その程度が障害のない人々も含めて連続していることを示しています。このため、2013年以前に診断を受けた方は異なる診断名がついている可能性があります。
ASDにおけるコミュニケーションの困難さ
ASDの人やその傾向がある人には、ローナ・ウィングが提唱した「3つ組の特性(社会性の障害、コミュニケーションの質的な障害、社会的想像力の障害)」が見られます。ASDの方は、人付き合いが難しく、相手の様子を伺ったり、空気を読むことが苦手です。コミュニケーションでは、相互的なやり取りが難しく、話が一方的になりがちです。冗談や嘘を真に受けたり、表情が乏しかったりして、子どもの頃には友達ができにくい傾向があります。大人になると、会話が続かずに気まずい思いをすることが増え、冗談が通じにくいと感じることもあります。また、恋人や友人と思っていた人に騙されやすいこともあります。
ASDの4つのタイプと特徴
ASDの方には、他者との関わり方や行動パターンによって次の4つのタイプがあります。
①受動型
自分の気持ちや考えを表すことが苦手で、人との距離感が遠く、感情表現も苦手です。誘われれば応じますが、自ら積極的に関わろうとはしません。このタイプは内向的で受け身な傾向が強く、周囲に意地悪をされても気づかないことがあります。
②積極奇異型
興味のあることには積極的ですが、興味のないことには無関心です。攻撃的や衝動的に見られることがあり、感情表現が大きく、怒りっぽい傾向があります。リーダー的な役割を果たすこともありますが、協調性に欠け、トラブルが生じることもあります。
③孤立型
ひとりでいることを好み、自分の好きなことに没頭します。友達付き合いを必要とせず、他者と関わることを避ける傾向があります。周囲に合わせようとすることもありますが、うまくいかないことが多いです。
④形式ばった大仰な型
マナーや礼儀にこだわり、柔軟な対応が苦手です。きちんとした服装をし、言葉遣いも丁寧すぎることがあります。このタイプは、他のタイプのASDの人が成長し、周囲に合わせようと努力する中で、融通が利かない行動パターンを示すようになります。
ASDと変化への対応
ASDの方は「変化に弱い」と言われ、進学、就職、結婚などのライフイベントや季節の変化に対しても不安定になりがちです。変化に対応できず困っていても、それを自覚しにくいことがあります。そのため、周囲に相談したり、助けを求めたりすることが難しいのが問題です。ASDの方は「同一性の保持」を大切にするため、変化に対して不安定になることがあります。
「こだわり」が自分を苦しめる
ASDの方は、日常生活において自分の決めたルールに強くこだわることがありますが、これが自分を苦しめることにつながる場合があります。家事においても、効率良く行うことが難しく、こだわりによって作業が進まないことがあります。以下のような対策を取ることで、自分を追い詰めずに家事を行うことができます。
・手順やルールを最小限にする
・家族に手伝いを頼む
・家事の量を減らす
・家電を利用する
・ハウスキーピングを利用する
お金のトラブルを防ぐために
ASDの方は他人の言葉を信じやすく、悪意を見抜くことが難しい傾向があります。例えば、「お金を貸して」という要求を断れなかったり、恋人からの金銭要求に応じてしまうことがあります。こうしたトラブルを避けるためには、自分の特性を理解し、お金の管理方法を学ぶことが重要です。
大切な友人を失わないために
ASDの方は、なぜ人とトラブルになるのか、その原因を自分で理解するのが難しいことがあります。他者視点を持つことが苦手であり、自分の行動がどう見られているのかを理解しにくいのです。友人や同僚にアドバイスを求めたり、専門家のカウンセリングを受けることで、より良い人間関係を築くための助けとなるでしょう。