お互いの特性が長所をかき消す
ADHDとASDが併発している場合、それぞれの特性が同時に現れることで、長所が十分に活かされないことがあります。例えば、ADHDの特性によって優れた企画を素早く思いつく一方で、ASDのこだわりが進捗を妨げ、柔軟な対応が難しくなるため、仕事が円滑に進まないことがあります。その結果、長所を発揮しにくい状況が生じることがあります。また、ADHDとASDが併発していると、物事をすぐに始められず、先延ばしにすることが多くなります。どちらの特性が強く出ているのかを見極めるのは難しいですが、ADHDの影響でやる気が出ず、手つかずになることや、ASDの影響で過剰なシミュレーションや混乱が生じ、優先順位をつけるのが難しくなることがあります。結果として「できない」と感じるのではなく、自分の気持ちを注意深く見つめ、「なぜできないのか」を理解することが重要です。これによって、ADHDかASDか、どちらの特性が強く出ているのかが分かることもあります。
私はASD?それともADHD?
発達障害について本やインターネットで調べたり、セルフチェックをしても、自分がASDなのか、それともADHDなのか分からないという人は多いと思います。発達障害は、定型発達との境界線だけでなく、発達障害同士の境界線も曖昧なことがあるため、セルフチェックでASDやADHDの両方に当てはまるケースが出てくることがあります。そのため、ASDとADHDが併発している人は意外に多いといえます。ADHDの特性は、不注意や片付けが苦手といった形で表れるため分かりやすいですが、ASDの特性であるコミュニケーションの困難さや強いこだわりは、適応力のある大人の女性では表に出にくい傾向があります。そのため、自分ではADHDだと思っていても、実はASDも併発しているケースも少なくありません。専門医を受診して自分にASDとADHDが併発していることが分かると、これまでの疑問が解消され、納得できることがあります。
子どもと大人の診断の違い
大人の発達障害の診断には、子どもとは異なる診断基準が用いられます。これは、大人では症状の現れ方に特徴があり、それをチェックする必要があるためです。大人の発達障害では、家庭や社会での困りごとのレベルや質が子どもとは大きく異なることがあり、そのために大人向けの診断基準が必要です。診断基準には、アメリカ精神医学会の「DSM-5」や世界保健機関WHOの「ICD-10」などがあります。発達障害の診断には、医師による問診や発達検査、知能検査、心理検査など、複数の検査が行われます。特に重要なのは、子どもの頃から困難を感じていたかどうかです。
ASDとADHDの境界線は?
発達障害には ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、SLD(限局性学習症)などがあります。それぞれに特徴的な特性がありますが、重なり合う部分もあり、はっきりと区別できない場合も少なくありません。ADHDは、主に集中力や行動・感情の制御が難しい傾向があります。一方、ASDは、主に人付き合いやコミュニケーションに課題があることが特徴です。しかし、発達障害には厳密な境界線がなく、一見ADHDの特性に見えても、実際にはASDが困りごとの原因であることもあります。また、ADHDとASDが同時に存在する場合や、発達障害の特性と区別が難しい症状の障害や疾患もあります。
SLD / LDと併発することもある
限局性学習症(SLD/ 学習障害(LD))は、ADHDやASDと混同されやすいことや併発することがあります。一般的な知能水準が標準的であるにもかかわらず、特定の学習領域で極端に苦手意識を持つ状態を指します。
・読字障害
読むことが難しく、読んだ内容の理解が難しい。
・書字障害
読むことはできても、漢字を書くことが苦手で、簡単な文章や報告書を書くのが難しい。
・算数障害
簡単な計算でつまずき、数や数量の概念の理解が難しい。
限局性学習症を持つ人々は、大人になっても仕事などで苦労することがあります。学生時代に勉強が上手くいかず、その経験が苦い思い出となることもあります。また、ASDやADHDを持つ人が限局性学習症を併発することもあり、その場合、個々の特性を理解し、適切な支援が必要です。
併発による困りごとや悩み
ASDとADHDが併発している場合、困りごとが両方の特性に影響され、複雑になることがあります。もちろん、ADHDやASD単独でも生活に大きな困難をもたらすことがあり、それだけで簡単なことではありません。ただし、ADHDとASDが同時に存在する場合、ADHDの顕著な特性の裏にASDの特性が潜んでおり、問題がより複雑になる傾向があります。ADHDとASDが併発している場合、表に出ている特性だけでなく、注意深く観察する必要があります。不安が強く、落ち着かない状態はASDの特徴のようですが、併発している場合はADHDによる多動性が原因でそわそわしている可能性も考えられます。
大人になってから発達障害だと気づく
女性の場合、子どもの頃はADHDやASDがあっても、本人も周囲の人々もそのことに気付かないことが多くあります。しかし、成長に伴い困りごとやトラブルが目立つようになることがあります。子どもの頃は周囲の大人、親や先生がサポートしてくれるため、困りごとやトラブルがあっても気づきにくいですが、中学から高校、大学、そして社会人になると、多くの人と関わるようになります。その結果、発達障害の特性による影響でトラブルが表面化し、周囲からの指摘が増えて「何かおかしい」と気づくことが多くなります。ADHDの特性は通常、幼少期から小学校入学時にかけて徐々に現れますが、女の子は男の子に比べて衝動性や多動性が目立たず、「活発な子」程度に捉えられることがあります。また、ぼんやりや不注意な傾向があっても、子どものうちは親や周囲の人が気づきにくいことがあります。
間違われやすい精神疾患
双極性障害は、うつ状態と活気のある躁状態が交互に現れる状態です。躁状態では、注意散漫になったり、エネルギーが高まったり、無計画な行動が増えたりすることがあります。これらの症状はADHDに似ており、躁状態では自己制御が難しくなり、金銭や人間関係でトラブルを引き起こすこともあります。双極性障害は周期的に症状が繰り返す傾向がありますが、ADHDの気分変化は短期間で起こり、数時間から数日程度で収束することが多いです。これらの状態は発達障害の人々によく見られる問題であり、適切なサポートや治療が必要です。それぞれの症状や特徴を理解し、適切なアプローチを取ることが重要です。また、ASDの人々は特定の興味や活動に没頭し、長時間取り組むことがよくあります。その後、疲労や過労により寝込むこともあります。これにより双極性障害との類似点が生じ、混同されることがあるかもしれません。
発達障害のグレーゾーンとは?
「グレーゾーン」とは、発達障害と診断するほどではないが、定型発達でもない状態を指します。発達障害の診断には明確な境界線がないため、診断がつくかどうかよりも、診断によって困りごとの対応の方向性がわかるかどうかが重要です。また、本人が困っていなくても、周囲の人が困っているケースもあります。周囲の人が困っているということは、客観的に見てその人自身やその人を取り巻く環境に困難があるということです。何らかの対応をしないと、その人の生活に多くの困難が生じる可能性があります。グレーゾーンとは、単に診断がつかない状態であるという考え方ではなく、その人自身やその家族、周囲の人々の状況に応じて考える必要があります。