ADHD(注意欠如・多動症)は、生まれつきの障害であり、遺伝が関与している可能性があるという研究結果が公表されています。自分やパートナー、家族にADHDの方がいる場合、子どもにその特性が遺伝するかどうかが気になるかもしれません。そこで今回は、ADHDの発現の可能性や男女による違いについてご紹介します。
ADHDとは
ADHDとは、「不注意」「多動性」「衝動性」といった特性を持ち、日常生活に困難をもたらす発達障害の一種です。この特性の現れ方によって、主に3つのタイプに分類されます。それは、多動・衝動性が顕著なタイプ、不注意が顕著なタイプ、またはその両方が混在するタイプです。
ADHDは親から子どもへ遺伝するのか?
ADHDの症状は一般的に12歳までに現れますが、幼少期には診断が難しく、就学期以降に診断されることが多いとされています。また、年齢とともに多動性が減少するなど、特性の現れ方が変化することもあります。ADHDは遺伝要因と環境要因が複雑に関わって発症すると考えられており、親から子へ100%遺伝するわけではありません。また、「しつけ」や「育て方」が原因ではないことも明らかにされています。親のしつけ不足や愛情不足が原因だと誤解されることがありますが、実際には育て方が直接的な原因ではありません。
ADHDの原因はまだ明確に解明されていませんが、先天的な脳機能の障害が関与していると考えられています。遺伝要因が関係している可能性はありますが、親からの遺伝が直接的にADHDの発現を引き起こす確率を特定することはできません。家族性に関する研究も進行中であり、ADHDのある家系では発現しやすい傾向があるとされていますが、具体的な確率はまだ不明です。
ADHDの発症原因について
ADHDの発症原因はまだ明確に解明されていませんが、脳機能障害説と環境要因説の2つが研究されています。最近の研究では、行動や感情を抑制する神経系に関わる脳の機能障害、特に前頭葉の機能低下が関与している可能性が示唆されています。前頭葉は注意を集中させたり行動を抑制したりする役割を持っており、ADHDの人々ではこの機能が低下していると考えられています。
前頭葉が正常に機能するためには、神経伝達物質であるドーパミンが適切にニューロンによって運ばれる必要がありますが、ADHDの場合、ニューロンがドーパミンを適切に運搬できず、結果として前頭葉の機能が低下する可能性があります。この機能低下が「多動」「衝動」「不注意」という特性をもたらす原因と考えられています。
ADHDの遺伝の確率と影響の複雑性
ADHDと遺伝子の関係についてはまだ解明されていない点が多く、研究や議論が行われています。現時点では、兄弟姉妹でADHDが発症する確率について明確なデータはありません。遺伝がADHDの原因ではないと断定することはできず、兄弟姉妹でADHDが発症しやすい傾向を示唆する研究もありますが、遺伝子が完全に一致する一卵性双生児でも、100%の確率でADHDが発症するわけではありません。
ADHDの男女差
ADHDの発症率は男女で差があり、一般的に4対1で男性の方が多いとされています。この差は、脳の機能や仕組みが性別によって異なることに起因する可能性があると考えられています。また、症状にも違いがあります。男性は多動の症状が顕著である一方、女性は不注意の症状が目立つことが多いです。これにより、女性の場合はADHDが見逃されやすく、男女比が実際よりも小さく見える可能性があります。
ADHDの診断年齢にも男女差があり、男性は8歳前後、女性は12歳前後で診断されることが多いです。この診断年齢の差は、女性の場合、発達障害であることに気付くのが遅れる傾向があるためと考えられています。
ADHDの診断について
ADHDの診断は、主にアメリカ精神医学会が定めた『DSM-5』(精神障害の診断と統計のマニュアル第5版)に基づいて行われます。診断には、本人への面談や問診、行動評価、知能・発達・神経学的検査などが含まれ、総合的にADHDの可能性が評価されます。出生後に行われる総合的な診断がADHDの有無を確定する主な手段となっています。
ADHDの原因は未解明
ADHDは古くから認識されている症状ですが、障害として理解されるようになったのは比較的最近のことです。脳の前頭前野や神経伝達物質の低下に関する研究は進んでいますが、具体的な発症原因はまだ明らかにされていません。
ADHDの特性は、適切な環境や接し方によってポジティブに活かすことができます。ADHDの人々は行動力や創造性、集中力に優れていることがあり、その個性を大切にして自分らしく成長できる環境を整えることが大切です。