社会では、他者に良い印象を与えるために普段とは異なる自分を演じることがあります。特に接客業では、心の内を隠し、愛想の良い振る舞いをすることが求められます。誰もが生きていく上で表の顔と裏の顔を使い分けることがあり、これは大人としての生きる知恵とも言えるでしょう。そして、家に帰ると本来の自分に戻るのです。イギリスの精神科医ウィニコットは、これを「真の自己」と「偽りの自己」と呼びました。しかし、幼少期から本当の自分を否定し、常に偽りの自分を演じ続けている人もいることをご存知でしょうか。
例えば、家庭で親が酒に酔って暴言を吐くような環境では、親の機嫌を損ねるとつらい経験をするかもしれません。そのため、子どもは親の顔色をうかがい、良い子を演じるようになります。また、いじめがあるクラスでは、目立つことがいじめを招く可能性があるため、目立たないように振る舞うようになるでしょう。さらに、勉強やスポーツで無理をしてでも良い成績を取らないと親に認めてもらえなかった人や、親の宗教に従い自分を押し殺してきた「宗教2世」と呼ばれる人々もいます。このように、親に愛されるために偽りの自分を演じ続けるしかなかった人たちがいます。
長い間、偽りの自分を演じ続けると、真の自分に戻ることが周囲から拒絶されるという不安を抱くようになります。やがて、偽りの自分でいることが当たり前になり、本当の自分を表に出すことに恐怖を感じるようになるのです。この状態で大人になると、元々は外交的で好奇心旺盛な人が、静かで内向的な性格に変わってしまうこともあります。しかし、ずっと偽りの自分を演じ続けることはできません。いずれ、人生がうまくいかなくなる時が来ます。その時、心や体が「本来の自分で生きたい」と叫び出し、SOSのサインが現れるでしょう。
今回は、偽りの自分を演じ続けることに限界が来た時に現れるサインをご紹介します。これは、真の自分に戻るべきタイミングを知らせるものでもあります。実際、多くの人が偽りの自分で生きていることに気付かずにいますが、そういった人々は無意識に生きづらさを感じています。今回ご紹介するサインに思い当たる節があれば、それは自分に嘘をついて生きている証拠かもしれません。
偽りの自分を演じることに限界が来ている6つのサイン
1. 心に空虚感を感じる
どれだけ生活が順調でも、常に虚しさがついて回り、心に穴が開いたように感じます。本当の自分を出すと他人に認めてもらえないという不安がその原因です。
2. 生きている実感が湧かない
現実世界と隔たれているような感覚があり、家族や友人と過ごしていても孤独を感じます。この感覚は「離人感」と呼ばれます。
3. 怒り
イライラしがちになり、些細なことで怒りやすくなります。これは、偽りの自分を演じ続けていることへの不満が原因です。
4. 恨み
自分が偽りの自分で生きざるを得なくなった原因を周囲に見出し、親や周りの人への恨みを感じるようになります。
5. 体調不良
体が常に緊張状態にあるため、自律神経が乱れ、不眠症や慢性的な疲労感が現れることがあります。
6. 依存症
虚しさや不安を紛らわすため、アルコールや嗜好品への依存が強まり、買い物や過食に走ることもあります。
誰もが、自宅で素の自分に戻ることで安心感を得ます。同様に、偽りの自分を演じ続けてきた人も、真の自分に戻った時には自由と安らぎを感じるでしょう。長年にわたり偽りの自分を演じてきた人にとっては、「本当の自分がわからない」と感じるかもしれませんが、心から楽しんだり熱中している時、そこには真の自分が現れています。また、占いのような方法を用いて自分を理解することも一つの手段です。例えば、自分は冷静な人だと思っていたのに、占いでは情熱的な性格だと言われると、その言葉に思い当たることがあるかもしれません。
本当の自分に戻ることが重要である一方で、それを無意識に恐れている人もいます。なぜなら、真の自分に戻ることで、周囲から嫌われるのではないかという不安があるからです。また、偽りの自分で築き上げたキャリアや人間関係を失うリスクが大きいため、身動きが取れなくなっている人もいます。
最も大切なのは、本当の自分を受け入れてくれる人との関係を大事にすることです。無理や我慢をせず、自分を大切にしながら生活を改善していくことで、徐々に真の自分に戻れるでしょう。