カサンドラ症候群とは何か?その特徴と対策について
皆さんは「カサンドラ症候群」をご存じでしょうか。これは、家族や身近な人が自閉スペクトラム症(ASD)を持つ場合、その特性が原因で円滑な意思疎通が難しくなり、心の交流ができないために、精神的・肉体的な苦痛を抱える状態を指します。しかし、この症候群は決してASDの方が悪いわけではなく、あくまでお互いの関係性の中で生じるものです。
ASDの方は、言葉を文字通りに解釈することが多く、相手の気持ちを想像するのが難しいといった特性を持つことが多いため、自然なコミュニケーションが難しい場合があります。このカサンドラ症候群は正式な病名ではなく、あくまで心の状態を指す言葉です。にもかかわらず、この症状に悩む方は少なくなく、多くの方が理解されない苦しみを抱え、孤独を感じながら必死に過ごしています。今回は、カサンドラ症候群について理解を深めることを目的に、その特徴や対策についてご紹介します。
1. カサンドラ症候群に陥りやすい人の特徴
イギリスの心理学者バクシー・アストン氏は、カサンドラ症候群の特徴として以下の3点を挙げています。
- パートナーのASD特性により、共感や情緒的表現が乏しく、理解し合うことが難しい。
- 情緒的な交流の不足によって対立が生じ、精神的・身体的な不調や人間関係の不満が溜まりやすい。
- 抑うつ状態や不安障害、不眠症、罪悪感、体重の変化、PTSDといった症状が現れる。
こうした特徴に該当する方は、完璧主義、忍耐強さ、面倒見の良さといった傾向があり、パートナーの特性に理解を示そうとする真面目な人が多いとされています。例えば、ASDを持つ夫Bさんとその妻Aさんのケースを考えます。Aさんは非常に忍耐強い性格で、Bさんの言動にも長い間我慢を続けてきましたが、ある時を境に心身の不調をきたし、ついに精神的な限界に達しました。このように、相手の特性を理解しようと努力することで一種の固定化された関係性が生まれ、カサンドラ症候群に陥りやすくなるのです。

2. 理解されない辛さがもたらす孤独感
カサンドラ症候群に陥った人々は、パートナーである夫や妻から理解されない苦しみを感じることが多いです。例えば、ASDを持つ夫Bさんが家庭の育児や家事を妻Aさんに任せっきりにし、家では一日中ゲームをして過ごすことがあったとします。Aさんは、自分の負担が増していると感じながらも、Bさんにはそれが伝わりません。そのためAさんは次第に孤独感を募らせていきます。こうした孤独感は、「夫婦二人でいるはずなのに、一人で生きている」という感覚を生み、心の負担がさらに増します。
また、この「理解されない」辛さは、パートナーだけでなく、周囲の友人や家族との関係にも影響を及ぼします。例えば、Aさんが友人Cさんに悩みを打ち明けた際、Cさんから「どこの家庭でもあることだよ」と軽く受け流されてしまったとします。このように、他者の理解を得られないことがカサンドラ症候群の苦しさを増幅させ、相談することでかえって心の傷を深めてしまう場合も少なくありません。

3. カサンドラ症候群への対策
カサンドラ症候群の対策は一人ひとり異なるため、それぞれに合った方法を取る必要があります。対策の一例として、発達障害の特性について双方が理解を深め、お互いの考え方や感じ方を共有することが重要です。パートナーに伝える際、視覚的な情報(図やイラストなど)を活用して説明する、また話を否定せず最後まで聞くなどのルールを設けると、対話が円滑に進む場合があります。相手がその場で感じている困難や説明の難しさに対して理解を示し、安心して意見を伝えられる環境を整えることが大切です。
さらに、同じような経験を持つ人々との交流も有益です。SNSやインターネットを通じてカサンドラ症候群に関する話題を共有することで、悩みを分かち合い、孤独感を和らげることができます。それでも状況が改善せず、心身の不調が続く場合は、医療機関や専門家に相談することも視野に入れてください。こうした対策を講じることは、個々人のケアにとどまらず、家族全体で問題を解決するためにも重要です。

たとえば、ASDの特性を持つ夫がいる場合、妻の心のケアがまず大切ですが、夫にも行動の改善を促す必要があります。家族全体での取り組みが症状の改善につながることが期待され、長期的な問題解決には欠かせません。
おわりに
カサンドラ症候群は、身近な人との関係性の中で生じる孤独や理解されない辛さからくるものです。ASDの特性を理解すること、相談相手を見つけること、そして必要であれば専門家の支援を受けることが大切です。この症状に悩む方々が少しでも安心できる環境を整えるため、周囲の理解とサポートが欠かせません。家族や周囲の方々と協力し合い、関係性の改善を目指していくことで、より心豊かな生活を送ることができるでしょう。