発達障害との関係も深い実行機能障害

実行機能とは?課題達成に不可欠な4つの段階とその重要性
実行機能とは?
実行機能とは、「段取りを考えて物事を達成するための能力」を指します。これは目標を立て、その達成に向けて必要な計画や準備、そして行動を体系的に進めていく力です。例えば、海外から来た友人に料理を振る舞う場合を考えてみましょう。どんな料理が喜ばれるのか、必要な食材は何か、料理は何時までに準備すべきか、といった一連の段取りを組み立て、それに基づいて行動する力が実行機能です。
この実行機能の困難さは、時に発達障害を持つ人々の「生きづらさ」とも関係しているとされます。課題達成に向けた実行機能を理解し、自分の行動を客観的に見つめ直すことは、自己理解を深め、自己改善につなげるうえで非常に有用な力といえるでしょう。今回はこの実行機能について、ADHDの特性を持つ友人サトウさんの実体験を通して、4つの段階に分けてご紹介します。皆様が仕事や日常生活で何かを達成しようとする際に、この段階のどこでつまづいたのかを振り返り、確認してみてください。

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1. 意思決定



まず、意思決定とは「自分の意思で課題を決定する力」のことです。例えばサトウさんはある日、上司から「来月の社内広報誌の制作を担当するように」と指示を受けました。その時、彼はどのようなテーマで制作するかを考え、A案とB案の候補を思いつきました。最終的に彼はA案を選び、制作テーマを決めました。この一連の流れが、実行機能の1つ目の段階である意思決定にあたります。
サトウさんは過去のテーマを調べたり、最新の話題が何かを考え、情報を整理して最終的にA案を選択しました。意思決定には、過去の経験や知識、新しい情報を取得・整理することが必要です。これらの作業が苦手な場合は、意思決定に時間がかかる、あるいは決定自体が困難になることがあります。特に発達障害を持つ方々の中には情報を整理するのが苦手な方もおり、意思決定の段階で困難を抱える場合も少なくありません。また、過去に失敗経験が多いと、新しい挑戦に対する抵抗感が強まり、意思決定まで進まないこともあります。

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2. プランニング



意思決定を終え、サトウさんはA案での社内広報誌の制作を計画する段階、つまり「プランニング」に進みました。この段階では、制作の段取りを調べ、各業務にかかる工数を見積もり、無理のないスケジュールを立てました。発達障害のASD(自閉スペクトラム症)特性を持つ方には、完璧主義の傾向が見られることが多く、新しいことへの不安を払拭するために詳細な計画を立てがちです。
また、実行機能には効率性が求められます。たとえば、折り紙に書かれた直線に沿って複数枚の紙を切る場合、定規とカッターを使うことで速く正確に切ることができますが、「ハサミしか使わない」というこだわりがあると効率が悪くなります。このように、プランニングの段階では、効率的な手段を考慮しつつ進める力も求められます。

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3. 課題処理



課題処理とは、プランニングで立てた計画に沿って、実際に行動し、課題を処理する力のことです。会社員として働く上では、上司からの指示に従って課題処理だけを行う場合もあります。サトウさんも制作の指示を受け、注意が散漫になりがちな特性と向き合いながら業務を進めました。彼は時折注意が途切れ、予定よりも時間を要してしまいましたが、最後には時間をかけたことで完成度の高い作品に仕上げることができました。
課題処理能力には、逐次処理と同時処理という2つのタイプがあります。逐次処理は物事を順を追って処理していく能力で、集中力が求められます。一方、同時処理は複数のタスクを並行して進める能力で、柔軟な判断や切り替えが必要です。ADHDの人は逐次処理が苦手な傾向があり、ASDの人は同時処理が苦手な場合が多いとされています。ただし、特性は個人によって異なるため、この点はあくまで参考情報としてください。

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4. 柔軟性



柔軟性とは、計画通りにいかない時に柔軟に対応できる力、またはうまくいかなかったことの原因を分析して改善していく力です。例えばサトウさんが制作の遅れに気づき、計画を修正する必要があったものの、自分のやり方を変えることに抵抗感を抱いてしまう場面がありました。最終的には、広報誌制作に詳しい同僚にアドバイスを求め、その助言に基づいて修正を行い、無事に期限内に納得のいく広報誌を完成させました。
柔軟性が欠けている場合、不測の事態に対して計画を調整できず、ストレスやパフォーマンスの低下に陥ることがあります。自分のやり方にこだわりすぎると、結果的に時間や労力が増え、効率も下がることがあります。したがって、状況に応じて計画を見直し、効率的な手段を柔軟に採用することが重要です。
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実行機能を理解し、自己成長に活かす
実行機能の4つの段階についておわかりいただけたでしょうか?ここまでのエピソードの中でも触れましたが、実行機能の困難は発達障害の特性と共通することが多々あります。サトウさんの例でも、各段階で特性が課題を左右し、時には課題達成に役立つこともあれば、つまずきの要因となることもありました。
この4つの段階を理解し、どの段階で自分がつまずきやすいか、またどのような特性が発揮されやすいのかを客観視することは、自己成長の新たな気づきにつながります。たとえば、意思決定で衝動的になりやすいと感じる場合は、計画の段階で信頼できるパートナーと相談するとよいでしょう。また、課題処理で時間がかかると感じる方は、あらかじめ時間オーバーした場合の対策を用意しておくとよいでしょう。
それぞれの気づきが、新しい挑戦に対する準備となり、より良い課題達成への一助になることを願っています。