自閉症の特徴について
自閉症と診断されていても、その状態像は一人ひとり異なります。特にアスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラム(ASD)の枠組みで考えると、多様性がさらに広がります。しかし、共通する心理的特徴も確かに存在します。理解力について考えてみましょう。例えば、絵や写真、マーク、文字、数字などを見せた際に理解できるかどうかは、その人によって異なります。実物でないと理解しにくい場合もあります。例えば、「トイレ」を示す際にジェスチャーで理解できる場合もあれば、写真で示すと理解することができる人もいます。しかし、写真では家のトイレと公共のトイレの違いが理解できない場合もあります。絵で示すとシンプルに表現できますが、絵と実物が似ていない場合には、それが同じものを表していると理解できないこともあります。公共の場で目にするマークの方が一般的でわかりやすいこともあります。その人にとって何がわかりやすいのかを試行錯誤することが重要です。
視覚過敏
自閉症スペクトラム(ASD)の方は視覚情報に敏感なことがあります。特に、最近多く見られる交通信号機やレーザーポインターなどの光を見て目が痛くなる方もいます。予測できない動きに恐怖を感じやすい方もおり、動物そのものが苦手ではなく、その動きが予測できないことに恐怖を感じるのです。蝶やトンボのように三次元の予測できない動きをするものが、大きな動物よりも怖いと感じる方もいます。
味覚過敏とその他の感覚過敏
自閉症スペクトラムの方の中には、味覚が過敏な方がいらっしゃいます。同じ店のカレーでも、ルーの違いを言い当てることができる方もいれば、逆に味覚が鈍感で「こんなに醤油をかけて大丈夫?」と感じるほど醤油を多くかける方もいます。味覚以外にも、口腔内の触覚過敏が関係していることがあります。臭いに敏感で食べられない場合や、魚屋さんや病院の消毒臭が気になるために入れない場合もあります。また、体臭が気になり他人に近づけない方や、暑さに非常に弱い方もいます。夏場に外気温が上がると体温も上がり、汗をかくのが苦手な方が多いため、エアコンなどの配慮が必要です。自閉症スペクトラムの方々の感覚特性が理解されないと、「無理強い」されることが多くなります。
触覚過敏および痛覚過敏
自閉症スペクトラムの方の中には、触覚が過敏な方がいらっしゃいます。冬でも長袖の服を着たがらない、帽子や靴下をすぐに脱ぎたがる、下着のタグが首に当たるのが嫌で外すように要求する、少しでも服が濡れるとすぐに着替えたがる、触れる感触が強すぎて握手をしない方などがいます。また、気圧の変化が気になる方もいらっしゃいます。一方で、痛みに対して非常に敏感に反応する方もいれば、痛みを感じていないように振る舞う方もいます。例えば、骨折していたにもかかわらず痛みを感じなかったということもあります。治りかけた傷口の瘡蓋を頻繁にはがしてしまい、傷がなかなか治らない場合もあります。
対人関係の特徴
自閉症スペクトラムはDSM-Ⅳでは広汎性発達障害と呼ばれており、現在はDSM-5に更新されています。この障害は「三つ組」の特性から成り立っています。その一つが「対人的相互反応における質的な障害」であり、具体的には以下のような特徴があります。
・目と目で見つめ合うこと、顔の表情、体の姿勢、身振りなど非言語的行動を調整することの著しい障害
・発達水準に応じた仲間関係を作ることの失敗
・他人と楽しみや興味、達成感を分かち合うことを自発的に求めることの欠如(例えば、興味のあるものを見せる、持ってくる、指すことの欠如)
・対人的または情緒的相互性の欠如(例えば、単純な社会的遊びやゲームに積極的に参加しない、一人遊びを好む、または道具や機械的な補助としてのみ他人を巻き込む)
コミュニケーションの特徴
自閉症スペクトラムの特徴の一つに「コミュニケーションの質的な障害」があります。具体的には以下のような特徴が見られます。
・話し言葉の発達の遅れまたは完全な欠如(身振りや物まねなどの代わりのコミュニケーションの方法を使おうとしない場合があります)
・他人と会話を開始し、継続する能力の著しい障害
・常同的で反復的な言語の使用または独特な言語の使い方
・発達水準に応じた変化に富んだ自発的なごっこ遊びや社会性を持った物まね遊びの欠如
これらの症状は3歳までに明らかになりますが、すべての症状がすべての人に見られるわけではありません。
独り言・実況中継
自閉症スペクトラムの方の独り言や実況中継は、自閉症の表出言語においてよく見られる特徴です。これらの言語行動は聞き手を必要とせず、機能は二つに分類されます。一つは精神の安定化としての独語で、例えば好きなテレビCMや歌のフレーズを繰り返す遅延性エコラリアが含まれます。内容が周囲の状況と一致しないことも多いですが、他者の叱責の場面をきっかけに過去に自分が叱られた場面を繰り返すこともあります。もう一つは行動調整としての独語です。
話し方の特徴
自閉症スペクトラムの方の中には、質問された際に妙にかしこまった話し方をすることや、詳細すぎる説明をする傾向が見られることがあります。このような特徴的な話し方を「ペダントリー(pedantry/pedantic speaking)」と言います。例えば、家族のような間柄の相手にも敬語を使ったり、年齢に不釣り合いな難しい言葉を使ったりします。また、「昨日は何をしましたか?」という質問に対して、前日の出来事ではなく、朝から晩までの詳細な行動を話すことがあります。これは相手との関係性や意図、話の文脈を理解することが難しいために生じる可能性があります。実社会でのコミュニケーション能力の向上には、ソーシャルスキルトレーニング(SST)などが効果的です。場面に応じた対応の仕方や言い方の学習、文脈を理解するための訓練プログラムもあります(例:ソーシャル・ストーリーズTM)。
こだわりに関する困りごと
自閉症スペクトラムの方は、決まった手順を守ることが得意である一方で、変化に苦手なことがあります。変化に対する弱点が困りごとにつながっている場合には、「考え方」や「行動の癖」を見直すことや「環境を調整する」ことでうまくいくこともあります。代表的な困りごとには以下があります。
・自分のやり方や価値観にこだわりが強く、私生活や仕事に影響が出る
・優先順位をつけるのが苦手
・作業がマイペースで、求められるペースに合わない
・新しいことに取り組むのが苦手
・私生活や仕事で急な予定変更に対応できず、パニックになる
自閉症スペクトラムの方は、物事の全体像を客観的に把握し、優先順位を決めて段取りを行うことが苦手なことが多いです。私生活や仕事においては、自身の工夫に加え、周囲の人や同僚、上司に自分の特性や得意不得意を伝え、環境や業務の調整をしてサポートを得ることも効果的です。
子どもの特徴
自閉症スペクトラムの子どもは対人関係を維持し、調整することが難しく、他者と共感的に関わることが困難です。幼児期には他者とのやり取りを含む遊びが少なく、遊びが自己の興味や関心に偏る傾向があります。他者と関わる場合も、一方的になったり、逆に受け身になりすぎたりするなど、相互的な関係が形成されにくいです。言葉掛けに対する反応が乏しく、耳が聞こえていないのではないかと心配されることもあります。言語発達が遅れる場合、それは単なる経験不足によるものではありません。自閉症スペクトラムでは言語のみならず、非言語的コミュニケーションの発達においても質的な異常が見られます。たとえ多くの語彙を持ち流暢な会話ができても、それがただの情報の羅列に過ぎたり、他者の反応には無頓着であったりします。順調に発話機能を獲得しても、1歳代後半にそれが消失する現象“折れ線現象”が約2割の症例に見られます。
理解の特徴
自閉症スペクトラムの人の理解の段階はさまざまですが、一般的に自閉症スペクトラムの人は話し言葉よりも視覚的に提示された情報の方が認識しやすいことがわかっています。また、言語表出と理解のバランスが悪く、よく喋る割に理解が伴わない自閉症の人も多いです。聴覚的な記憶は良好で、聞いたセリフを再現することはできますが、抽象的な概念や文脈を理解するのが難しく、相手の意図を汲み取れないために会話が成立しにくい特徴があります。例えば「ちょっと待っていて」と言われた場合、その待ち時間が運動会のスタート時なのか、家族がデパートに行くためのものであるかで大きく異なります。“ちょっと”は状況によって1秒から2時間まで様々な意味を持つ曖昧な概念です。「気を付けてまっすぐ帰ってね」と言われて、「まっすぐ行くと机にぶつかります」と字義通りに解釈してしまうこともあります。
般化の難しさ
自閉症スペクトラムの人は、学んだことを別の場面に応用して柔軟に活用するのが一般的に苦手です。例えば、飛び出しの多い子どもが迷子にならないように家で練習しても、実際の場面でお巡りさんの尋ね方が少し異なるだけで、練習の成果を発揮できないことがあります。これは、自閉症の人が「般化」の難しさを持ち、文脈が少し変わるだけで学んだことを応用するのが難しくなるためです。
問題行動
自閉症スペクトラムの人は些細なことで不安になりやすいです。特に見通しが持てない時や自分の予想と違う展開になった時には、不安から混乱をきたすことがあります。突然のアクシデントや予期しない事態が苦手なのはこのためです。彼らのこだわり行動は、不安を軽減するためのものであり、常に同じものを手にしたり、同じ順番に物を並べたりすることで不安定な世の中から自分を守っていると考えられます。活動を拒否したり、パニックを起こす時には、その原因が何らかの不安である可能性を考慮する必要があります。
積極・奇異型のタイプ
ある男の子は小学校の特別支援学級に通い、非常に人懐っこく、初対面の人にもかまわず話しかけます。鉄道に対する強い興味があり、全国の特急に関する話を始めると、相手が迷惑そうな顔をしても気づかずに話し続けます。1歳半検診時に言葉の遅れがあり、落ち着きがなく、パニックになると母親が訴え、保健師によるフォローが始まりました。言葉の数は急速に増えましたが、指示を受け入れるのが難しく、物事の切り替え時に大騒ぎを繰り返していました。3歳で療育センターに受診し、軽度の知的障害を伴う自閉症と診断されました。行動面の問題は徐々に落ち着き、知的にも伸びて境界域知能の水準に達しましたが、言葉の指示だけでは理解が難しく、視覚的な手がかりが必要です。相手の立場に立って物事を考えるのが苦手で、積極・奇異型の対人社会性を示す自閉症のタイプです。
知的障害を伴うケース
ある男性は28歳で作業所に勤務しており、話し方はぎこちないものの挨拶はでき、仕事に対して真面目な態度を示します。自分なりの手順があり、用具の置き場所なども決まっており、通常とは違う流れになると混乱します。また、音に敏感で、掃除機の音には耳を塞いでしまいます。支援学校の高等部を卒業するまで特に医療機関にはかからなかったが、19歳の時にてんかん発作を起こし、精神科を受診。そこで初めて自閉症スペクトラムと診断されました。保護者も驚きましたが、知的障害に加えて自閉症スペクトラムであることが理解され、「不思議に思っていたことの謎が解けた」と作業所の職員に話しました。作業所では彼の特性を理解し、特性に合った支援を行うことで、スムーズなコミュニケーションが可能になりました。
支援・重要ポイント
支援が成功するためにはいくつかのコツがあります。ひとつは予防的な介入で、特に不適切な行動は発生前に防ぐ必要があります。もうひとつはプラスのフィードバックで、実現可能な目標を設定し、達成した際には本人にメリットがあることを結びつけることです。最後に、本人を変えようとするのではなく、環境を変えるという発想が重要です。結果として折り合いがつけばそれでよいのです。自閉症には定型発達とは異なる世界観や文化があり、どちらが正しいというわけではなく、たまたま自閉症が少数派であるだけです。
発症年齢は?
自閉症スペクトラムの特徴は、一般的に1歳までには現れることが多いとされています。乳児期の発達においては、姿勢や運動の異常、睡眠覚醒リズムの問題、過剰に泣くまたはほとんど泣かないなどの非定型的な発達特徴が多いとされています。後方視的研究やきょうだい児の乳児期からのフォローアップ研究でも、1歳頃までにはASDの特徴が現れることが示されています。保護者が発達に問題を感じる時期は2歳頃が多いですが、知的障害を伴わない場合には気づきが遅れる傾向があり、兄姉がASDと診断されている場合には早まる傾向があります。
困りごとの対処法
自閉症やアスペルガー症候群を含む広汎性発達障害は現在、自閉症スペクトラムに含まれています。DSM-5でアスペルガー症候群の分類がなくなり、自閉症も含めて自閉症スペクトラム(ASD)に統一されました。アメリカ以外の国の対応はさまざまで、英国ではアスペルガー症候群という診断名が使われていることもあります。厚労省のICD-10ではアスペルガー症候群が用いられています。自閉症スペクトラムの特性や困りごとは個々に異なります。TEACCHの構造化やPECSなど、環境調整の方法が紹介されています。これらに共通するのは、自閉症スペクトラムの特性に応じた環境調整です。自閉症スペクトラムのある人に対する環境調整は、視覚的にわかりやすく、見通しを持ちやすくし、苦手な刺激を減らすことが重要です。環境を整えることで困りごとが少なくなるように工夫しますが、自分だけでは難しいこともあります。その際には周囲の人や職場の人々に協力をお願いすることも重要です。